平野新コーチ、昇格選手に植えつける「絶対落ちない、1軍の力になる」という思い
指導者2年目にして、求められる役割は大きく変わる。平野コーチの働き場所は2軍から1軍へ、担当も守備走塁から打撃に配置転換された。言動の根底にあるのは「チームが優勝するために自分に何ができるか。何をしなければいけないか」という考えだ。
今季は多くの若手を1軍に送り込んだが、一方で定着できずに戻ってきた選手もたくさん見てきた。その中で「2軍に帰ってきた時の彼らは一回りも二回りも自信がついて、大きく見えた。目も違います。1軍に上がるのは本当に大切なことなんだ」と実感できた。
今度は昇格してきた選手を指導する立場に変わる。「是が非でも食らいつけよ。絶対ファームに落ちない、1軍の力になるんだ、結果を出すんだ、という気持ちで取り組ませられるようにしたい」と熱弁する。
現役時代は通算256犠打を決めたバントの名手。打撃部門を指導する金本監督、片岡コーチとはタイプが異なることから寄せられる期待は大きい。エンドラン、セーフティーバントなど小技のレベルアップについて「そういうところをしっかり任せていただけたら指導していきたい」と自覚する。
1年前に現役を引退したばかりの37歳で、金本体制2年目も1、2軍のコーチングスタッフの中で最年少だ。感覚は選手に最も近い。「『どういうことを言われているのかな』と疑問に思うんですけど、『はい』しか言えないじゃないですか」と選手の心情を代弁。「『こういうことを言っているんだよ』と、うまく伝えられたら」と監督や他のコーチの言葉を“翻訳”して、選手との橋渡しの役目も担う構えだ。
「何か見つけてやるというのが当たり前」と打撃コーチの肩書に縛られない。何よりも形だけの練習を嫌い、投内連係やランダウンプレーでは走者役を買って出て、時にはユニホームを汚して滑り込みまでする。4日の紅白戦では選手不足のため、途中から中堅の守備に就き、はつらつとした動きでファンの大歓声を浴びた。
秋季キャンプでは朝から精力的に動き回る姿が印象的だ。打撃練習中はタブレットで動画撮影し、その場で選手と一緒にフォームチェックする。連日、一番遅くまで室内練習場に残って指導しているのも平野コーチだ。
「1軍は勝たなければいけない職場」と即答し、「勝つためにはどうすればいいかを日々考えながら、早め早めの準備をしたい」と表情を引き締める。背番号76の熱い力が巻き返しを期する超変革2年目を支える。