９月に５年半ぶりに世界王座に返り咲き、３階級制覇を果たしたボクシングＷＢＣ世界スーパーバンタム級王者、長谷川穂積（３５）＝真正＝が、親交のある阪神・金本知憲監督（４８）を激励した。２年目の巻き返しを目指す虎将と不死鳥チャンプの豪華対談が実現。長谷川はアニキの胴上げが見たいとエールを送り、金本監督は今季の苦悩やリーグ優勝への思いを語った。

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　金本知憲監督（以下、金本）「新チャンピオンおめでとう！ベルト、大きいなあ」

　長谷川穂積（以下、長谷川）「ありがとうございます！（ベルトを見せて）昔は腰に巻いていたのですが、最近はみんな肩にかけるようになりました。ですから、ベルトが昔より大きくなったんですよ」

　金本「これは、もらえるの？」

　長谷川「もらえます。３本目です」

　金本「返り咲きか。しぶといな（笑）。育成から昇格したウチの原口みたいやな（笑）」

　長谷川「練習風景を拝見しましたが、金本さん、バットを持って見ているのですね。あれ、（制裁の）武器に見えます（笑）」

　金本「そう？（笑）。もたれかかれるから楽なんよ」

　長谷川「秋のキャンプ後、春のキャンプが始まる２月までは、選手はどのように過ごすのですか？」

　金本「自由だけど、そこでどうするか。オレが若いころはあまり練習をガンガンやる選手がいなかった。オフに練習しているとバカじゃないの？と言われていたけど、今はやるのが普通。よく今の選手はひ弱になったとか言われるけど、今の選手は強いよ」

　長谷川「ボクサーの選手寿命も延びています。昔は３５歳なんて（ボクサーは）皆、引退してましたから」

　金本「食べ物もいいし、サプリメントも進んでいるし…。今、穂積は現役で最年長？」

　長谷川「僕より少し上の人がいますが、世界王者では僕が最年長です。金本さん、キャンプって、やはり大変ですか？」

　金本「まだ気楽。勝負がないからね」

　長谷川「試合の方がしんどいですか？」

　金本「メンタルがやられるね」

　長谷川「選手時代の方が楽でしたか？」

　金本「精神的にはね。逆に（監督は）体のしんどさはない。腰は痛いけど（笑）」

　長谷川「チームが勝てない時、歯がゆさはありますか？」

　金本「歯がゆさばっかりよ。自分がやるんじゃないから。負けたら監督の責任。そういう選手を使った監督が悪いというところに至るからね」

　長谷川「選手時代とは、優勝への思いは違うものですか？」

　金本「監督としての方が（優勝）したい」

　長谷川「分かります。僕が監督だったらと思って考えたら、イメージできますね。だって、すごく大変じゃないですか。プレッシャーは計り知れないですよね。ストレスは大丈夫ですか？」

　金本「結構あったよ。しんどくて、立てないこともあったし…。意外と僕は繊細なんだろうね…（笑）。今年も２回くらい胃潰瘍（かいよう）になった。現役の時も、肩をケガ（きょく上筋断裂）した時、一度だけ胃潰瘍になったけど…」

　長谷川「胃潰瘍ですか…僕はないですね。それは、勝てないストレスなのか、周囲からのヤジや批判に対するストレスなのか、どちらですか？」

　金本「思うようにいかないということだろうね。ボクシングで言えば、穂積が負けて、ジムの会長が『彼が負けたのはすべて僕の責任です』と言うようなものかな」

　長谷川「それが年に２～３回なら美談ですけど、毎日ですもんね。２年目から何かを変えるんですか？」

　金本「基本的には一緒。若手が伸びてきたら競争は減ってくるし、レギュラーは固定されてくる。でも、危機感はずっと与えるよ。１年や３年やったからってレギュラーじゃない。いい成績で５年やって、やっとレギュラーと言える。普通の成績で３年間やったとしても、次にいい選手が来たらパッと代える。５年間いい成績なら、次が来ても他へ行ってくれって言うよ」

　長谷川「秋のキャンプで、期待通りに伸びていないなと思う選手もいますか？」

　金本「それは、いるね」

　長谷川「その判断基準はどんなものでしょうか？」

　金本「打者なら振る力とか、試合の対応力とか…。中谷という選手なんかは、振りも速くなってきた」

　長谷川「若手が覚醒するタイミングというものはありますか？」

　金本「運もあるしね。原口なんて育成からだもん」

　長谷川「金本さんが胴上げされている姿を見たら、グッとくるでしょうね…。監督業は実際にやってみないと分からない大変さがあると思う。お話を聞いて余計にそう思います。だからこそ、胴上げが見たいです」

　金本「選手に落とされるかもしれないな…。北條なんて画びょうを持って胴上げするんじゃないか（笑）」

　金本「（長谷川が王者に返り咲いた）９月の試合は、タイガースも試合があってテレビで見れなかったんだよね。試合後に記者から穂積が勝ったと聞いて、えぇ～っ、うそ～って（笑）。正直、厳しいかなと思ってたから」

　長谷川「みんな、そう思っていましたからね」

　金本「（チャンピオンに返り咲いた試合は）左の拳を痛めていたんだよな」

　長谷川「はい。以前、金本さんから『骨が折れていても自分が痛くないと思えば大丈夫』という話を聞きました。（左手親指を）脱臼骨折してしまって…試合の４５日前でした」

　金本「まず、練習ができないだろ？」

　長谷川「左は、ほとんど打ってないです。（手を見せて）指もこんなふうに形が変わってしまいました。リタイアするか、そのままやるか、二択しかなかったんですよ」

　金本「よく４５日で骨がくっついたな」

　長谷川「超音波を当てて、くっつくのはくっついたんです。痛みは１週間前までありました。でも、アドレナリンが出たら大丈夫で…。金本さんに言われた通りでした」