鹿児島・指宿「幸運の島」へ続く道
「恋愛成就の島」「成功の島」「宝の島」などとさまざまな幸運な名前で愛される島が鹿児島県指宿(いぶすき)市にある。その名は知林ケ島(ちりんがしま)。陸地から離れたところにあり、普段は名前の通り“島”だ。しかし、干潮時には砂州が浮かび上がって陸とつながり、つかの間だけ行き来が可能となる。3月から10月までの珍現象とあり、幸運の島へ渡る人が後を絶たない。
知林ケ島につながる浜に立った。
若いカップルやかつて若かったカップル、1人で来たおじさんやおばさんも潮が引くのを待っていた。外国人の姿もあった。
島は小さく、1周は約3キロほど。2時間くらいで回ることができる。ただ、ゆっくり歩いていると時間がかかってしまい、砂州が海に消えて島に取り残されることもあり得る。なので潮の干満時刻をしっかりチェックする必要がある。指宿市役所のサイトで閲覧可能だ。
島に取り残されてしまうと次の干潮時刻まで待つか、あるいは海上タクシーを呼んで陸まで乗せていってもらうしかない。陸までの距離は約800メートル。なんだ、短いじゃないか、タクシーに乗ってもワンメーターか。などと思ってはいけない。海上タクシーの料金は陸のタクシーとは違い5千~6千円もかかってしまう。
砂州は潮の干満に合わせてゆっくり出現する。砂州が十分に現れていないのにいらいらして渡っては危険だ。
地元の人は「海水がかぶっているのにあわてて歩くと必ず足をさらわれる。浅そうに見えても潮の流れは強くて速い。あっという間に湾の外に流される。そうなると救出のためヘリコプター騒動になります」と話し、決して潮の流れを軽く見てはいけないことを強調した。そんな騒動を起こすのは間違いなく観光客なのだそうだ。
島には「目八葵貝」(もくはちあおいがい)という絶滅した貝の殻が見つかる。左右一対で合わせるとハート形になる。カップルならこの貝殻を探してみるのもいい。ただ、地元観光ガイドの宮田さんは「絶滅したので持って帰らずに島に返しましょう」と呼びかけている。
砂州は島と陸地を結ぶことから「絆」を連想させ、それが転じて「恋愛成就」にもつながり、道が現れることから「道が開ける」、そこから連想して「成功」を意味するように解釈が拡大していった。
砂州が出現するのは3月から10月まで。幸運の訪れを願って鹿児島まで開運旅行だ。
★砂むし温泉ほっこりと「休暇村指宿」
知林ケ島へは「休暇村指宿」が近い。砂州の入り口まで徒歩数分だ。建物は8月1日にリニューアルオープンしたばかりで館内は新品の香りが漂う。
一番の特徴は、指宿名物の砂むし温泉「癒砂」(ゆさ)がスペースを拡大して海に面し、開放的になったことだ。ほかにも和洋室のプレミアムルームは部屋の端から端まで大きな窓が設置され、部屋の中にいても十分に開放感を得ることができる。
ほかには2つのレストランがリニューアル。メインダイニング「菜摘」では会席料理とハーフバイキングという新しいスタイルで食べることができる。ハーフバイキング用の料理は小鉢が13種類、セイロ砂蒸し料理にフルーツやデザートなど、十分な量を楽しめる。スタンダードコースは大人1泊2食付きで8800円から。2000円プラスで和洋室のプレミアムルームに。予約、問い合わせは同休暇村へ(TEL0993・22・3211)。
◆アクセス
大阪・伊丹空港から鹿児島空港へは日本航空が1日7便、全日空が同6便。普通運賃は片道2万6800円。LCCのピーチが関空と鹿児島空港を結んでいる。鹿児島空港からJR指宿駅へは高速バスで2300円。駅から休暇村へは送迎バスで約10分(要予約)。