兵庫・豊岡市竹野でマリンスポーツ満喫(後編)
日本海は竹野の海を潜った。城崎温泉から車で15分ほどのところに位置する町。南の海に比べて地味だったけれど、京阪神から近場の海としては十分おもしろい。マアジの大群はいるし、アミエビの一種イサザアミの無数の群れが黄色い塊を作って漂っていた。「海の宝石」といわれる色鮮やかなウミウシも簡単に見つかった。先週から続く竹野で楽しめるマリンスポーツ。今週はスキューバダイビングをお届けする。
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ダイビングボートが海を疾走する。目指すは「淀の洞門」と呼ばれる潜水ポイントだ。出航して約10分。ボートは減速し、エンジンが止まった。
「着きました!」。地元のダイビングショップ「T-style」のオーナー兼インストラクター田中陽介さん(32)が声をあげた。米俳優キーファー・サザーランドっぽいイケメンだ。本人にそう言うと「それ、だれですか?」と逆質問。少し前にはやった米ドラマ「24」の主役だと伝えると分かったような顔をしてくれたが…。
タンクを背負ってボートのへりに座りバックロールエントリー。竹野の海は透明度10メートルくらいで太陽の光を受けた青い世界が広がった。
海中には切り立った巨岩が海底から突き出ていた。穏やかな海上とは正反対の荒々しい風景が迫る。岩の間を飛ぶように泳ぎ、ミズクラゲを手のひらに乗せて遊んだ。ウミウシがいっぱいいると田中さんが言っていたので探すとウミウシよりもサザエのほうが簡単に見つかった。もちろん、採ってはいけない。眺めるだけだ。幸いなことに貝類は好物ではないので未練はない。
サザエの写真を撮っているとウミウシもいた。2匹がくっついている。ウミウシはたいてい雌雄一対で見つかるが、こんなふうにくっついているのは…エッチの最中ではないのか。こういうのを見ると引きはがしたくなる。指でつまんで軽く引っ張ったが激しく愛し合っていて離れない。よく考えたらかなりひどいことをしている。かわいそうなので元に戻した。
前方を行く田中さんが海面へ浮上していった。同じように浮上するとそこは淀の洞門内部のドーム状の空間だった。
『鬼伝説』の地 淀の洞門には鬼伝説が伝わる。昔々、淀の大王と呼ばれる鬼がいて周辺の切浜集落の住民を苦しめていた。そこにスサノオの命が通りがかり、鬼を退治した。浜にはスサノオが乗ってきたと言われる船が岩となって残っているという。そんな伝説が信じられるような不思議な空間だった。
再び潜降。海中ではマアジが群れを作っていた。田中さんが群れを追いかける回遊魚のように後方から泳いでくる。群れは捕食者から逃れるように勢いよく通り過ぎていった。
◆電車でのアクセス
JR大阪駅から特急こうのとりに乗って竹野まで片道4940円。三ノ宮駅から姫路経由で特急はまかぜに乗って同4300円。京都駅からは福知山経由で特急はしだて、特急こうのとりと乗り継いで片道4620円。時間はいずれも2時間半から3時間弱。
◆車でのアクセス
舞鶴若狭自動車道春日ジャンクションを経由して和田山インター下車。国道9号、同312号、同178号を経て竹野へ。大阪から約3時間。