「武士の献立」能登で春の旅路を行く
女優・上戸彩(28)主演の話題作、映画「武士の献立」が12月14日に公開される。江戸時代、加賀藩の料理方の家に嫁ぎ、加賀騒動に巻き込まれそうになったお家を細腕で守った年上女房・舟木春の物語。作品後半、藩の威信を左右する饗応の宴に出す食材を求めて夫と旅するシーンは、能登半島一帯でロケが行われた。金沢からさらに北へ。春が旅した足跡を追った。
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【義経の舟隠し・石川県志賀町】
これはマズいことになった。上戸彩もロケで歩いたというから、恐る恐る足を踏み入れたものの…なぜこんな断崖絶壁の上に小道があるんだ?強風に吹っ飛ばされそうになる。足を滑らせたら恐ろしい波音を立てている眼下の海に真っ逆さまだ。
冬の荒海の雰囲気を十二分に体感しながら崖の上で立ち往生…。撮影は春の陽気が感じられる今年4月に行われ、その時は凪(なぎ)だったとか。それを先に言ってほしかった。
金沢から能登半島西岸を車で北上すること90分。映画で春(上戸彩)と安信(高良健吾)が、提灯(ちょうちん)を手に海沿いの小道を旅した場面は、志賀町「義経の舟隠し」でロケが行われた。
絶壁と絶壁の切れ目に海が入り込んだ細長い入り江は、かつて源頼朝に追われて奥州に逃れる源義経一行が、海難を避ける際に48隻の舟を隠したとの伝説が残る。海が穏やかな日は海底がみえるそうだが、荒れた海から入り江に、波がしぶきをあげて飛び込んでくるさまもまた絶景だ。
【琴ケ浜海岸・輪島市】
劇中、旅に疲れた春が暖をとるうちに眠り込んだ岩穴は、輪島市の「琴ケ浜海岸」にある。浜辺を夫の後ろに付いて、けなげに歩くシーンも撮影された。
ロケ当時ののどかな雰囲気とは、まるで別風景。波が目の前の大きな岩にぶつかり、豪快にしぶきが舞い上がる。季節によって能登の海は、さまざまな表情をみせる。
砂浜の西端にある岩穴に入ってみる。夏なら格好の昼寝スポットだが、冬場は寒すぎて…うたた寝は無理そうだ。
【白米千枚田・輪島市】
輪島市の市街地から能登半島の北東へ向かうと、海沿いの傾斜地に無数の田んぼが棚田として並ぶ「白米千枚田」が見えてくる。日本人は「百」とか「千」を使うのが好きだな…と思いきや本当に1004枚の田がある。
映画では春が食材探しの旅の途中で、柚子(ゆず)を使ったお菓子、柚餅子(ゆべし)に興味を持つ場面で登場。日本初の世界農業遺産に認定されており、美観を守りながら、米一粒の大切さを広く伝えるため、田んぼ1枚ごとのオーナーを募集する制度も。有名人も参加しており、かつて「米百俵」演説を繰り出した小泉純一郎元首相の名前もあった。