歴史の街~堺 小旅行に格好のスポット

 世界三大墳墓のひとつ仁徳天皇陵古墳があり、中世には豪商の街として勢力を誇った大阪府堺市。現在では工業地帯やベッドタウンのイメージが強いが、名所史跡が数多く残る街が近年脚光を浴び、全国から年間700万人が訪れる観光地となっている。昨年末には市川海老蔵主演の映画「利休にたずねよ」も公開された。盛り上がりをみせる歴史ある街を探訪した。

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 大阪市中心部からJRや南海電車だと12分程度。あまりに近すぎるため、観光地として見逃していた感がぬぐえないが、小旅行でふらり訪ねるには格好のスポットだ。

 風情を楽しむなら大阪・天王寺から路面電車(阪堺電車)に揺られるのも一興。国内現役最古の「モ161形」車両から最新型までが下町を走り抜け、大和川を越えればそこは堺。運賃200円、約30分の旅である。

 ◆千利休     

 豪商の長男として生まれた千利休の屋敷跡は紀州街道に沿って走る阪堺線・宿院駅近く。街道の大通りから一筋西側に入った、ビルや民家に囲まれた一角に、庭と「椿の井戸」が残る。豪商屋敷にしてはこぢんまりと映るが、当時の屋敷はかなり広大だったという。

 堺の街は大坂夏の陣で焼失。後世に資料をもとに屋敷跡が特定されたが、利休の生家の名字は「田中」。残存していた当時の地図には、多くの「田中家」があったそうだが、利休が近隣住民との日常交流を記した書簡を残していたため、隣家の名前などから場所が割り出されたという。

 ◆旧市街     

 安土桃山時代に外周を堀で囲い、豪商たちによる自治都市として栄えた堺。現在では南北に走る阪神高速15号堺線と、同4号湾岸線に挟まれたエリアが旧市街にあたり、かなりの巨大都市だったことが分かる。同業者ごとに集まって町を形成していたといい、今も町名には「鉄砲町」「材木町」「旅籠町」と昔のなごりがある。

 旧市街北部には古い街並みが残り、喧騒とかけ離れた雰囲気。「鉄砲鍛冶屋敷」、寺子屋「清学院」、現存する江戸初期の町屋を歴史館にした「山口家住宅」などがあり、散歩コースとして最適だ。

 ◆寺社仏閣    

 商いで財を成し、寄進に励む商人が多かったらしく、市内には約300の寺がある。

 市内最大の木造建築である「本願寺堺別院」もそのひとつ。正面左側にある「御成門」は、江戸時代に狭山藩の大手門が移築されたものだそうだが、実は…借金のカタにとってきたという、いかにも商人の街らしい話も。

 旧市街の南部には、千利休ら著名な茶人が修行をした禅寺「南宗寺」もあり、堺のイメージが変わる歴史旅となった。

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