JR四国予土線“日本一遅い新幹線”
ついに四国新幹線誕生!?-。3月15日のダイヤ改正に合わせ、JR四国が予土線で新列車の運行を開始した。白地に青のラインと、愛きょうのある団子っ鼻を備えた姿は、初代0系新幹線そっくり。ただし、最高速度は驚異の時速85キロという…。その名も「鉄道ホビートレイン」。超型破りな“日本一遅い新幹線”は、初対面から衝撃的だった。
思わず笑ってしまった。神戸から6時間近くかけて、たどり着いたのは、ウワサのホビートレインの始発駅である宇和島駅。待望の入線で、見事に“裏切られ”た。ガタゴトと現れた1両編成の車両の顔には、あの団子っ鼻がなかったのだ。
「実は窪川行きの前方だけなんです。両方にすると、連結もできなくなるので…」。JR四国の担当者が苦笑いで話す。一応、それっぽいイラストが描かれているが、おかげで見た目はまるで、ゆるキャラのように…。進行方向の先頭部分に回り、ようやく団子っ鼻の愛くるしい姿と対面できた。運転席からの視界を遮らないよう、メッシュ状の金属であしらわれている。カワイイ。在来線のホームにポツンとたたずむ姿が、何ともカワイイのだ。
実はこのホビートレイン、正体はディーゼル車両のキハ32形を初代0系新幹線風に改造して誕生した観光列車である。約1000万円を投じたといい、外見はもちろん、青を基調にした車内には、実際に初代0系で使用されていた座席や、歴代新幹線の模型などを展示したショーケースも設置。汽笛も実物で、出発時には懐かしの「ファ~ン」が鳴り響いた。
華麗に宇和島駅を飛び出した“新幹線”は、自然豊かな緑を背に疾走…とはいかない。ディーゼル車だけに最高速度は時速約85キロ。今回乗車した宇和島-近永間での運行は、時速35キロ程度での運転になるという。しかもワンマン運転。田園風景を眺めながら、のどかな時間が過ぎていく。
だが、こうした超型破りな特徴だけに運行開始前から話題を集め、料金は普通列車と同じということも手伝って、今や全国から鉄道ファンや家族連れが殺到。取材日は春休み中の昼間だったこともあり、車内はさながら都心の通勤通学時間帯のような混雑ぶりに。乗客数は同じ普通列車が20人程度なのに対し、多いときは100人近くになるという。
予土線の全線開通40周年記念も兼ねての誕生とはいえ、この衝撃的な列車を、JR東海や西日本も、よくぞ了承したものだ。“新幹線”は約30分間で終点の近永に到着。今回は乗られなかったが、窪川行きの運行では、江川崎あたりから四万十川沿いを走る。日本最後の清流を、“新幹線もどき”がいく。想像しただけで、なんだか楽しくなった。