青いレモンの島~愛媛・岩城島
「青いレモンの島」と呼ばれる瀬戸内海の小さな島、岩城島(いわぎじま)を訪ねた。しまなみ海道の橋が架かる生口島(いくちじま)の東南に位置し、周囲約12キロ、人口は約2200人。1985(昭和60)年ごろから島全体でレモン栽培に取り組み、今では「レモン懐石」を出す農家レストランも現れ人気を呼んでいる。周辺の島々はレモンの生産量日本一を誇り、レモンを使ったメニューがたっぷりだ。
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レモンメニュー1発目は「レモン懐石」だ。岩城島にある「でべそおばちゃんの店」を直撃した。普通の民家と変わらない造り。ちょっと奥まったところにあるので見つけるのに手間取った。たどり着くと3人のおばちゃんが元気に迎えてくれた。
店は完全予約制。準備はほぼ整っていた。出てきた懐石料理はまさにレモン尽くし。果実をくりぬいて皮をお皿代わりにし、そぼろ寿司を盛ったり、豚肉とレモンの薄切りを串刺しにしたオリジナル料理「豚(とん)だレモン」だったり、鯛の刺し身を自家製のレモンじょうゆで食べたりと期待以上だった。
店主の西村孝子さん(66)によると、もともとは「岩城生活研究グループ」として集まった地元の女性たちが「愛媛県夢提案制度」にレストラン開店を応募して認められたことから始まった。
オープンは2006(平成18)年。クチコミで評判が広まり、県外からはもちろん外国人客も訪れるようになった。西村さんは「続けることが大事」と人なつこい笑みを浮かべた。
大切なことを一つ。「でべそ」とはおへそのことではなく、地元の言葉で「でしゃばり」という意味。でべそなおばちゃんたちが客をもてなす。
次はスイーツのお店だ。伯方島にある「Patisserie T cafe 玉屋」。地元産のレモンを使ったオリジナルケーキ「リモーネ」や、桃をそのまま1個使った「丸ごとピーチ」、甘夏を使ったゼリー「甘夏のしずく」など、一口食べるごとに顔が緩んでしまうスイーツがてんこ盛りだ。
創業時の60年前は和菓子店だった。父から店を受け継ぎ、洋菓子店として切り盛りしているオーナーパティシエの國定薫さん(66)は「都会の洋菓子屋とは違います」と地元産の食材にこだわりをもっている。
レモンを素材にした料理を出す店はほかにもたくさん。自分だけのレモンの店も見つかるかもしれない。