のど越しいいフランス料理~三重・名張
2014年10月10日
仔羊のポワレカレー風味
オーナーシェフの大賀俊信さんとソムリエの妻ゆかりさん
「めっちゃうまい!」は今月から料理のみならず、うまい料理を“生み出す人”にもフォーカスします。店の数だけオーナーと料理人にはストーリーがあり、それぞれの物語をお伝えします。今回取り上げるのは三重・名張のレストラン「ラ・シルフィード」。オーナーシェフの大賀俊信さん(65)は、元大阪・新阪急ホテルのフランス料理のシェフを務めました。45年のキャリアを経てたどり着いたのは“のど越しのいいフランス料理”だそうです。
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大賀さんが新阪急ホテルへ入社したのは大阪万博の前年、1969(昭和44)年。バンケット(宴会)部門の配属だった。
「当時は洋食か和食、たまに中華。万博で世界中の料理人が来て、翌年くらいから日本人もフランスへ勉強しに行くようになりました。フォアグラやトリュフなんて言葉が普通に言われるようになったのもそのころからですね」と振り返った。
自身は観光以外で渡仏したことはない。「私の修業の場はホテルでした。さまざまな部門を回り、最後に任されたのがフレンチ。私の味を気に入って下さる常連さんもついて自信ができたのも独立のきっかけです」
29年間勤めた後、17年前「ラ・シルフィード」をオープン。主婦だった夫人のゆかりさんは、開店後40歳を過ぎてからソムリエの資格を取った。好みが多様化し無国籍でカジュアルな料理を提供する店が増える中、あくまでフランス料理にこだわる。バターやクリームは控えオリーブオイル、季節の野菜を多めに使う独自の味を確立。大賀さんは「ボリューム感、満足感はあるのにお腹がもたれない。“のど越し”のいいフランス料理になっていると思います」と自信を込めた。
「シェフのおすすめディナー」(5000円)は前菜が「サーモンと梨のタルタル仕立てウニ添え 野菜のギリシャ風ソースで」など2種。さつまいものスープは素材の甘さが際立つポタージュで、魚料理は「鯛のオリーブソース」。グラニテ(氷菓)は澄んだ赤い色がかわいらしい「カンパリのシャーベット」。小さな脇役だが、中締めのようにグラニテが出てくると「フレンチのコースだぁ」とテンションが上がる。
メーンの「仔羊のポワレカレー風味」にはブロッコリー、にんじん、なすなど一つ一つ丁寧に味付けされた野菜がふんだんに。自家製デザートは杏のタルトなど3種。メニューはほぼ月替わりで「いつ来ても違うものを味わってもらいたい」とメニュー開発と格闘する日々だという。ハレの日に訪れたい、隠れ家的名店だ。
◆「ラ・シルフィード」 三重県名張市瀬古口628の3。TEL0595・64・1302。近鉄名張駅から徒歩8分。営業時間午前11時半~午後2時ラストオーダー、午後5時半~同8時半ラストオーダー。水曜定休。コースは3000円から。ランチは1500円から。価格はすべて税別。