観光列車「伊予灘ものがたり」運行開始
2014年10月18日
下灘駅に停車中の「伊予灘ものがたり」
下灘駅に沈む夕日
JR四国の観光列車「伊予灘ものがたり」が、今年7月から運行を開始した。全席グリーン車・レトロモダンな車内の2両編成が、予讃線海回りの松山~伊予大洲・八幡浜駅間(通称・愛ある伊予灘線)をゆったりまったり走行する。運転区間や時刻によって「大洲編」「八幡浜編」「双海編」「道後編」と4つのストーリーに分かれ、アテンダントや地元の人が総出で物語を演出。伊予灘に沈む夕日をクライマックスに、あなたが鉄道ドラマの主人公になる。
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車窓が走るスクリーンになった。「伊予灘ものがたり・双海編」に乗車した松山までの約2時間半。どの席からも海を見渡せる車窓から、飽きることない“物語”が展開された。
出発駅の伊予大洲駅では、駅員やスタッフがホームから手を振ってドラマの始まりを告げる。たぬきがすむと言われる五郎駅では、ホームでたぬきの着ぐるみを着た“たぬき駅長”が踊っていた。
全編に流れるのは美しい伊予灘。穏やかな海がいつまでも、どこまでも広がる。約10キロで走行する串駅付近の鉄橋から下をのぞくと、海の上を走る錯覚に。松本零士の漫画「銀河鉄道999」の出発シーンのようだ。
スクリーンから飛び出して、波打ち際に行ける場所がある。約7分間停車する下灘駅だ。かつて日本一波打ち際に近く、「青春18きっぷ」のポスターにもなった絶景駅。「列車にこんなに近づいていいの!?」と思うほどの撮影スポットだ。夕日と柑橘(かんきつ)をイメージした2両の車両が、マリンブルーとよく似合う。
2時間ドラマに、グルメのシーンはつきもの。双海編では、地元レストランによる旬の食材をふんだんに使った特製御重が楽しめる(4500円、予約制)。肉、魚、野菜、お弁当箱の杉も地元産。季節によって違う和洋折衷の品々は、目にも楽しく、そしておいしい。
どこか懐かしく、洗練された車内。レトロモダンな舞台で女性アテンダントがきめ細やかな心配りを見せる。車内では地ビールやカクテル、地酒なども注文可能。それを運ぶアテンダントたちに、にこやかな表情が絶えない。誕生日を迎えた乗客へのサプライズも仕掛けるなど、車内演出としての活躍も見せる。
通過駅では、ホームにいる人みんなが決まって手を振る。どこかで見た光景-。駅周辺の自治会などが自然発生的に行っているという。伊予上灘駅では、ホームで地元特産品などの販売も。地元の人々がエキストラになり旅情をかき立てる。
物語が終盤に近づいた時、アテンダントに声をかけてみる。どうですか、これから一緒に道後温泉でも…。アテンダントの温かい笑顔が愛想笑いに変わり、やんわり断られながらもボランティアガイドの存在を教えてくれた。
同列車の「道後編」(八幡浜午後4時5分発・松山午後6時6分着)ではこれからの季節、特に11月上旬から12月中旬にかけて、海に沈む夕日が下灘駅で見られる。さて、あなたの伊予灘ものがたりは、どんな物語にしますか?
◆「伊予灘ものがたり」
・車両 キハ47系気動車2両編成(全車グリーン車指定席)
・運転区間・運転日「大洲編・双海編」松山~伊予大洲間、「八幡浜編・道後編」松山~八幡浜間を土・日・祝日に各1便運行。
・料金 松山~伊予大洲間(片道)は1930円、松山~八幡浜間(同)は2260円(乗車券・グリーン券料金含む)。※食事料金は別途必要。
・問い合わせ 指定席券の購入・食事の事前予約は、乗車日の1カ月前からみどりの窓口やJR四国ワープ支店・主な旅行会社で受付(食事は乗車日の4日前まで)。空席情報などはhttp://www.jr‐shikoku.co.jp/iyonada/へ。伊予灘ものがたりに1回乗車できる「愛ある伊予灘・南予1日フリーきっぷ」(大人5300円)もおトク。