“北の終着駅”廃止の前に旅愁しみじみと~留萌本線・増毛駅
高倉健主演の映画「駅 STATION」の舞台にもなった北の終着駅がまもなくその役目を終えようとしている。留萌本線の留萌~増毛間が12月5日で廃止になることが決まった。夏休みシーズンを前に、鉄っ子記者が“不器用”ながらも列車に乗り込んだ。
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列車は国鉄形がいい-。30年前に製造されたキハ54形は、5時44分に深川駅を発車した。クーラーのない車内には「JNR」の国鉄マークが入る扇風機、0系新幹線の座席を再利用しているなど武骨ながらも懐かしさがいっぱいだ。
車窓はさびれた風景がいい-。留萌駅を出ると初夏の日本海が広がってきた。窓を開け風をまともに受けてみる。曇り空と濃い海の色と潮の香り。レールをきしませながら、キハ54形は海岸をはうようにゆっくり走る。
男も無口なひとがいい-。車内には鉄ちゃんが3、4人。互いに軽く会釈をするだけで、それぞれ写真を撮り、高倉健ばりに車窓を眺めている。
7時20分に増毛駅に到着。錆(さ)びだらけの車止めが、もの悲しさを演出する。アイヌ語で「カモメのいる所(マシ・ケ)」が駅名の由来というが、頭髪のさびしい男たちがご利益を願って入場券を買っていくという。私も18年前、入社当時の“輝いた”部長を思い出した。
列車は15分で折り返す。「北海道新幹線を乗り継いで今日中に名古屋に帰らにゃいかんのです」と、鉄ちゃんの一人が話しかけてきた。映画の挿入歌「舟唄」(八代亜紀)のようにしみじみとしてはいられない。
かつては炭鉱やニシン漁で栄えた沿線の雄大な景色を眺められるのもあとわずか。「青春18きっぷ」のシーズンでもある夏休みに、北の大地に思い切って旅立ってみるのもいいだろう。できれば一人旅でしみじみと乗って旅愁を感じて欲しい。