大谷劇場!157キロ&ノーステップ送球
「オールスター・第1戦、全パ1‐1全セ」(19日、札幌ド)
マツダオールスターゲーム2013は19日、札幌ドームで第1戦が行われ、全パと全セが1‐1で引き分けた。全パの3番手で登板した日本ハム・大谷翔平投手(19)は、全球150キロ超えの力勝負で1回無失点。降板後は左翼に入り、二塁へのノーステップ送球でスタンドを沸かせた。打っては2打席凡退も、見事な「二刀流劇場」でファンの視線を独占した。MVPは全セの2番手で登板し、3回2安打無失点の沢村拓一投手(25)が獲得した。
「ピッチャー・大谷」‐。五回表、「二刀流劇場」の開演を知らせるコールに札幌ドームが大歓声に包まれた。高まる期待に胸が躍った。「スピードは後からついてくればいい。久々にすごく力を入れて投げた」。全13球、すべて150キロ超えの直球勝負。居並ぶスーパースターを差し置いて、19歳のルーキーが主役を張った。
ちょうど1年前。花巻東時代の昨年7月19日、大谷は岩手県大会準決勝で高校生最速の160キロをマークした。その大台には届かなかったが、中村の2球目には、プロ入り後の自己最速タイとなる157キロを記録。若武者らしい真っ向勝負で、1回を2安打無失点に抑えた。
六回表には投の刀を鞘に収め、「6番・左翼」に入った。マウンドには、花巻東の3年先輩である菊池が上がる。同校進学のきっかけとなったあこがれの先輩との競演。「不思議な感じでしたが新鮮で。守備でバックアップしたかった」と振り返った。
プロ初の左翼守備となったが、1死二塁からバレンティンのライナー性の打球を捕球すると、二塁走者・西岡の離塁が大きいと見るや、矢のようなノーステップ送球。間一髪セーフも、メジャー帰りの西岡を自慢の強肩で驚かせた。
打席では六回、三浦の超スローカーブに打ち取られ、頭をかいた。球速表示も出なかった遅球に、「あっ、テレビで見たやつだって、感動しちゃいました」と笑った。同点の九回2死では左飛に倒れて最後の打者となったが、打って投げて、守ってのフル回転に充実感を漂わせた。
栗山監督が「子供たちがあこがれるマンガのような選手が翔平」と演出した二刀流起用は、確かにファンの心を熱くした。スタンドでは両親、姉が見守った。父・徹さんによれば、大谷は子供のころ、毎年球宴のテレビ中継を食い入るように見つめていたという。今夜、成長した息子は確かに、見る者すべてをくぎ付けにした。
大谷は最後に声を弾ませた。「すごく楽しかった。安打は出なかったけど、いい経験ができた。独特の雰囲気の中、1つ1つが勉強になりました」。第2戦では藤浪との同級生対決も控える。手にした経験値。膨らんだ自信。二刀流ルーキーの夢舞台はまだまだ終わらない。