帰ってきた尾藤スマイル…箕島あと一歩
「全国高校野球・1回戦、日川4-2箕島」(8日、甲子園)
熱戦が開幕し、29年ぶり出場の箕島は、日川に敗れて初戦突破はならなかった。尾藤強監督(44)は、11年に亡くなった父・尾藤公元監督(享年68)譲りの笑顔でナインを指揮。敗れはしたもののさわやかな戦いぶりを見せ、オールドファンもスタンドに詰めかけた聖地で、新たな歴史を刻んだ。
同点の夢を乗せた大飛球が右翼手のグラブに収まり試合が終わると、箕島・尾藤監督の顔に何とも言えない笑みが浮かんだ。「楽しくやれました。最後のは、オヤジが風を吹かせたのでしょう。『そんな甘くないわ』って」。初めての聖地はやはり最高の場所だった。
3点を追う五回攻撃前の円陣。笑顔で選手に語りかけた。「こういう展開を想定して練習してきたやろ。甲子園でこういう試合を楽しめる。とにかく楽しもう!!」。言葉に応えるように、チーム初安打が生まれて2点を奪取。名門復活を期待する観衆で埋まった一塁側アルプスが揺れた。
選手の成長がうれしかった。3月の就任当初は、個人の結果に一喜一憂する集団だった。それが甲子園では、ナインは最後まで「あきらめるな」と仲間に声をかけ続けた。「監督が来て、僕らは救われた。感謝しています」。中西玲人主将(3年)の言葉を伝え聞くと、尾藤監督は「自分勝手なヤツらだったのが助け合って…本当にいいチームだったと思います」と、涙をこぼした。
29年ぶりの夏に記した新たな一歩。スタメン唯一の2年生、泉宏武内野手は「ここで学んだことを僕たちの代にもしっかり伝えたい」と決意を語った。指揮官は「甲子園の厳しさ、楽しさ、あたたかさ、いろんなものを教えてもらった」と振り返った。箕島の再建を託された名将の後継者。父譲りの“尾藤スマイル”と一緒に、すぐにまた帰ってくる。