済美に負けじ!新田“軟式甲子園”準V
この夏、全国の舞台で“野球王国・愛媛”が大活躍を見せた。全国高校軟式野球選手権大会(8月26~30日、兵庫・明石トーカロ球場ほか)で新田が準優勝。リトルリーグでは、えひめ港南リトルが全国選抜大会(8月23~25日、宮城・利府町中央公園野球場ほか)で初の全国制覇を果たした。甲子園を沸かせた済美の怪物右腕・安楽智大投手に負けじと、愛媛の球児が元気いっぱいだ。
悔しさの中にも、全力を尽くした誇らしさがある。横浜修悠館との決勝は、延長十一回サヨナラ負け。聖地・明石で、日本一にはあと一歩届かなかった。だが、胸を張っていい。3年ぶり2度目の準優勝。新田の浜田英希監督は「選手たちは厳しい練習に耐えて、全国の舞台で粘り強く戦ってくれた」とナインをたたえた。
進撃を支えたのが、大黒柱のエース右腕・藤岡だ。接戦の連続だった決勝までの4試合を1人で投げ抜いた。決勝戦は延長十一回、2本の長短打と失策が絡んでサヨナラを喫した。それでも「力いっぱい投げた。どこにも負けない練習量で決勝まで勝ち上がれたと思う」と笑顔で振り返った。
182センチ、85キロの恵まれた体格から繰り出されるストレートはMAX138キロ。軟式の球は軽く、空気抵抗に負けやすいため、硬式に比べスピードガンの球速は出にくい。130キロを出すのが難しいとされる中、藤岡の剛速球は全国でもトップクラス。まさに“軟式の安楽”だ。
松前中時代に県大会優勝を経験するなど注目され、複数の強豪硬式野球部から誘いも受けた。迷いはあったが、3年時の夏に新田が全国準優勝。「自分も全国大会で活躍したい」と新田の軟式野球部を選んだ。昨年もエースとしてマウンドに上がり8強入り。思い描いた通り、全国の舞台で大活躍を見せた。
15度の全国選手権出場を誇る新田だが、練習環境は決して恵まれていない。学校グラウンドでは90年、センバツ準優勝の硬式野球部が“主役”。軟式野球部はグラウンド片隅に内野ノックができる程度の広さしか与えられておらず、フリー打撃も満足にできない。
「そんな中でどうすれば勝てるかを考え、工夫してきた」と浜田監督。狭いスペースでもできるバントや走塁練習を重視。小技を徹底的に磨き上げた。「打線はみんながつなぐ意識を持ち、1番から9番までどこからでも点が取れる」と小渕主将。1点を確実に取り切る野球で接戦を勝ち上がった。
県内で軟式野球部を持つのは新田、松山商、三崎の3校。新田と松山商が長く“2強”として競い合ってきた。浜田監督は「松山商を倒し、全国で勝つために、硬式にも負けないくらい厳しい練習を続けてきた」と言葉に力を込める。
大会後の今月2日。学校体育館で「準優勝報告会」が開かれ、新田ナインは全校生徒から大きな拍手で迎えられた。「優勝旗を持って帰れなくて悔しい。でも、みんなが温かく迎えてくれたのが本当にうれしかった」。小渕主将は準優勝盾を誇らしげに掲げた。
今月末には国体(29日~10月2日、東京・八丈島)に出場する。3年生にとっては最後の大会だ。「もう1回、横浜修悠館と対戦して、次こそ勝ちたい。優勝したい」とエース・藤岡。集大成の舞台、チーム一丸で“有終の美”を目指す。