バレ砲2戦不発…母の前で力み否めず

 「ヤクルト2‐3阪神」(13日、神宮)

 虎党の六甲おろしが響く中、一塁側ファウルゾーンを、口を真一文字に結んで引き揚げた。11日の広島戦(神宮)で、王貞治(巨人)らが持つシーズン最多55本塁打に並んだヤクルトのバレンティンは、虎投の前に4打数無安打。2戦連続で不発となった。

 初回、誰もが新記録達成の瞬間だと信じた。スタンリッジの147キロ直球をバットの先ながら捉えると、大飛球は右翼方向へ飛んだ。思わず打球の行方に向かって両手人差し指を突き出したバレ砲。だが、右翼から左翼方向に向かって吹く逆風に押し戻され、フェンス手前で失速。「入ると思った?ううん。捉えきれていなかった。バットの先だった」と首を振った。

 「これまで3人の方が打つことのできなかった56本。55本とは違う大きな意味を持つと思う」。前人未踏の領域へは、そう簡単に行けないことは分かっているが、力みは否めなかった。第2打席以降も空振り三振、右飛、止めたバットでの投ゴロ。完璧に封じられた猛虎バッテリーの攻めに、「すべて外角だった。ホームランにできる球はなかった」と話すしかなかった。

 前日にオランダから来日した母・アストリッドさんに、「神のご加護がある。きょう1本出るような気がしている」と見送られて球場入りしたが、予言はならなかった。試合前練習から報道陣約100人が押し寄せた。「試合に集中したいから、ノーコメント」と笑ったバレ砲。最愛の母、そして、歴史の証人となるべく集まった2万9328人のファンの前で、アーチをかける願いはかなわなかった。

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