藤本、声援に涙…思い出の甲子園に別れ

 「阪神7‐7ヤクルト」(21日、甲子園)

 右翼席から、自然とわき起こった阪神時代のヒッティングマーチ。左翼席の燕党が奏でる応援歌とともに、聖地に2つのメロディーが同時にこだました。今季限りで現役を引退するヤクルト・藤本は、自らを育ててくれた古巣・甲子園で、最後の打席を飾った。

 万雷の「藤本コール」。懐かしい黒土の香り。タテジマを着ていたあのころを、思い出さないはずがなかった。七回1死二塁。打席に入る時から、こみ上げるものがあった。「ぐっと来るものはあったけど、泣くとボールがぼやけて見えるから」

 降り注ぐ「藤本コール」を一身に浴びて打席に入ると、「見逃し三振だけはしたくない」と誓っていた35歳は、かつてのチームメート・久保田の投じた149キロ直球をフルスイング。「ストライクゾーンに来た球は全部振った。悔いはないです」。鋭いライナーは中堅・柴田のグラブに収まった。大観衆は惜しみない拍手を送り続けた。

 通算1000試合出場の花束を掲げ、スタンドに向かって深々とお辞儀すると、こらえていた涙が一気にあふれ出した。「ありがたいですね。やっぱりいろいろ思い出します。一番は03年の優勝ですかね」。ネット裏では、両親、夫人、4人の子どもたちが、その誇り高き勇姿を見守った。

 慣れ親しんだ聖地とのお別れ。この球場で愛された男にふさわしい花道を飾った。

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