プロ野球創成期を球界の第一人者として支え、監督として巨人を不滅の９年連続日本一に導いた川上哲治氏が２８日午後４時５８分、老衰のため東京都稲城市の病院で死去した。９３歳。

　南海、ヤクルト、阪神、楽天で監督を務めた野村克也氏（７８）が３０日、川上氏とのエピソードを明かした。

　南海監督時代、戦力に乏しいチーム事情に困り、巨人監督を務めていた川上氏の自宅を訪れたという。「助けてください。ピッチャーを譲ってもらえませんか」と直談判すると、川上氏は「長嶋は将来の監督になる男。トレードとはどういうものか見せたいので、同席を許して欲しい」と話し、意外な形で交渉が始まったという。結局、巨人から山内と松原、南海からは富田の２対１でトレードが成立したが、監督の帝王学を伝授する光景を目の当たりにして「さすが巨人だと思った」と振り返った。

　現役や監督時代は打倒・巨人に燃えたノムさんだが「野球少年の時は赤バットの川上、青バットの大下にあこがれ、巨人ファンだった。遠い存在で、まさに神様。非常に残念です」と、沈痛の面持ちだった。