下柳氏 打って投げて大ハッスル
阪神などで活躍し、昨季限りで引退した下柳剛氏(45)の引退試合が30日、母校の瓊浦(けいほ)高のグラウンド(長崎市)で行われた。同級生を中心に約30人のOBが集結。変則ルールの熱闘は、下柳氏が攻守に活躍して勝利に貢献。最後は仲間の胴上げで宙を舞った。
敵も味方もない。試合が終わると、全員が一斉に下柳氏のもとへと集まった。かつてこのグラウンドで苦楽をともにした、かけがえのない仲間たち。胴上げの気配を察知した左腕が、懸命にその輪から逃れようともがく。
「お願い!!それだけはやめて!!」
生来の照れ屋、そして高所恐怖症。でも、抗(あらが)うすべはない。頑強な体はたちまち仲間たちの手で抱え上げられ、やがて大きく宙を舞った。1回、2回、3回…。両手を上げた。笑顔になった。1年遅れの引退試合。反骨の左腕のプロ野球人生は、感動のフィナーレとともに幕を閉じた。
この試合は下柳氏と3年間をともにした同級生たちが企画。正式な引退試合を行わずにユニホームを脱いだ同氏に最後の花道を用意しようと、当時の主将・宮崎光浩氏(45)らが中心となり夏ごろから準備が進められた。
「途中まで何も知らんかった」と左腕。水面下で計画されたサプライズ企画に、県外からの参加者を含む28人のOBが集結。左腕にとっては在校時以来27年ぶりの母校グラウンド凱旋となった。
米ドジャースの入団テスト挑戦以来、半年ぶりのマウンドとなった左腕。バックの失策もあり大量点を奪われた。しかし、最終回を前に特別ルールにより15点劣勢が同点となると、2死二塁から中越え適時打。直後のマウンドでは2死満塁のピンチをしのぎ、激闘に終止符を打った。
「みんなケガがなかったのが一番」。胴上げ後は参加者全員と固い握手を交わしながら、満面の笑みを浮かべた。幾多の栄光に彩られた野球人生に欠けていた最後のピース。それが故郷にあった。長崎にあった。野球人生の第一歩を踏み出した、このグラウンドにあった。