打撃の神様安らかに…川上氏お別れの会
「打撃の神様」として知られ、10月28日に93歳で死去した元巨人監督の川上哲治氏のお別れの会が2日、東京都内のホテルで行われた。巨人・長嶋茂雄終身名誉監督(77)ら約900人が参列。会では、ソフトバンクの王貞治球団会長(73)があいさつし、不滅の巨人V9監督との別れを惜しんだ。
その偉大さ、存在の大きさをあらためて実感した。祭壇には川上氏の遺影、現役時代の背番号『16』のユニホームなどが飾られた。あいさつをした巨人軍OB会会長でもある王氏は緊張の面持ちだった。
思い出が、あふれ出るかのようだった。川上氏の監督就任1年目の1961年。南海との日本シリーズの際、土砂降りの雨の中、多摩川グラウンドの芝生の上で打撃の猛特訓をした。「強烈な印象としてこの胸に残っております」。川上氏が監督として出場した11度の日本シリーズはV9などすべて日本一だ。「勝利に対する執念の結晶だと言えます」と語った。
勝負に徹した厳しい指揮官だったが、心配りも“超一流”だった。1963年の西鉄との日本シリーズ。敵地・平和台での第7戦を大勝し、日本一を決めた。だが、試合後、チームには外出禁止令が出た。危険から選手らを守るためだった。「みんなビックリした。そういうことまで配慮してくれる」と懐かしんだ。
王氏が現役時代の1971年。スランプに陥ったが大阪の宿舎で川上氏に「俺についてこい」と言われ車で向かった先は京都の料理屋だった。「この一夜は川上さんとの距離がグッと近づいた忘れえぬ貴重な夜となりました」とその配慮に感謝した。
「残念ながら旅立たれましたけど、見守っていただけると思ってます。川上さんに恥じないように、怒られないように。(ファンに)感動してもらうプレーを追い求める」。偉大な“球界のドン”の背中を追い続ける。