動かなければ動かす…原監督強さの秘密

 星野楽天にこそ日本一連覇を阻まれたものの、セ・リーグにおける原巨人の強さは群を抜いていた。2位の和田阪神がつけられたゲーム差は致命的な12・5。巨人の強さはどこにあるのか。原辰徳監督(55)の巧みな選手操縦術はどこからきているのか。阪神を徹底的に追うデイリースポーツが“阪神的見地”から、原監督に単独インタビューした。「Gの核心」に迫る。

 ‐阪神タイガースをメーンにして報道しているデイリースポーツが巨人・原監督に聞く、というスタンスでお話を伺わせていただきます。

 「いつも読ませてもらっているよ。特に甲子園の時は。デイリーの阪神に対する記事は温かい。厳しさと同時に温かさがある。思いやりを感じるね」

 ‐厳しさが足りない側面もありますが…(苦笑)。それはさておき、今季は圧倒的な力でわれわれが見守っていた阪神タイガースを粉砕しました(笑)。今年のリーグ連覇を振り返ってどう評価していますか。完成形という感じですか?

 「今年のチームは全体的に見ると、2012年度のチームよりはるかにバランスの取れたいいチームだったと思います。結果的にいうなら圧勝という形でリーグ連覇を達成したように見られがちですけど、われわれ戦っている現場とすれば本当にギリギリのところで勝ち星を重ねることができたと。いかに連覇することが難しいのか…昨年であるならば、今年のチームだったら95勝ぐらいしていたと思いますね。ただ、何ていうんだろう…勝負の世界というのは、チームをつくる上で昨日より今日、当然昨年より今年、さらに強くなるんだという気持ちを持ち続けて相手チームといい勝負ができる、という意味においては、大変自分の中でも貴重な2013年度であったような気がしますね」

 ‐阪神側からしてみると、8月27日からの東京ドームの3連戦が山場だったように思います。阪神は4連勝、巨人は連勝でゲーム差は5で迎えました。初戦は今季阪神戦初先発の内海。阪神は2番にあえて左の今成をぶつけ、打ち合いを挑んだように見えました。ところが0‐4で完敗し、ここから奈落の底に落ちていきます。あの3連戦の位置付けをお聞かせ下さい。

 「チームにとっても非常に重要な東京ドームでの3連戦でしたね。それまでタイガースの方がはるかに分がよかったわけです。全体的な勝率はうちがよくてもね。チーム状態としても決してよくなかった。その前が、神宮‐横浜だったと思います。内海も含めて少し苦手意識があるという中で…しかし大事な3連戦を迎えるにあたって、色んな手を使ってもいい結果が出てないと…対タイガースという部分ではね。『ならばよし』と。『左右投手どうであっても、出方によって変えるんじゃなくてこっち(巨人)の戦い方をやってみよう』と考えた。ジャイアンツサイドに立って、ジャイアンツの戦い方の中で、相手投手は能見か、あるいはメッセンジャーか、というような形にしようと。これは僕の中でも“賭け”だったんですね」

 (続けて)

 「そういう点で最初いいスタートが切れて、結果的には3連勝という形になった。戦いの中でも、かなりジャイアンツに勢いのついた3連戦だったと思います。その意味では、あの3連戦というもので今年のジャイアンツというものはこうやって戦っていこうという形ができた。要するに、8月、9月というのは非常に大事な月ではあるけれども、10月、11月に入るまで長丁場だから。特に、クライマックスであったり、あるいは日本シリーズであったりという短期決戦で戦うという点において、またそこも見据えた状態で戦うという点では、8月の終わりから9月というのは大事なんです」

 ‐相手が阪神というのは関係なく、巨人の事情だけを考慮に入れて臨んだ3連戦だったということですか。

 「(阿部)慎之助を3番に置いて、4番に村田を置いて右、右、左という感じのオーダーでいったんじゃないかな。2番に亀井を入れたと思うが…。そういう中で、相手投手を考えずに自分たち本位で戦ってみようと。(阪神戦で)結果があまり出てなかったというところでね。こっちも勝負にいったわけですよ」

 ‐阪神戦の前のDeNA戦で、3番・阿部、4番・村田という打順を組みました。あれを見て個人的に『やられた!』と感じました。初回にいきなり怖い阿部が出てくるわけですから…。どうしてあのオーダーがひらめいたのですか?

 「やっぱり『このままではダメだな』って。途上であると同時に、ジャイアンツはまだまだ伸びしろがあるチームだと今でも思っているし…。そういう意味では、阪神の投手陣をなかなか打てなかったわけですよね。その中で何かアクションを起こす必要があるだろうと。やっぱり動かないとね。水だって滞っていると腐っちゃうもんね(笑)。動かなければ動かす。またそういう時期でもあったし。そういう点では、阪神3連戦を控えた中で、何がベストなのか、あるいはどういう用兵をすべきか一番考えたところでした。これは長期展望ですよ。チームにとって、これから短期決戦という厳しいゲームが来るんだというところでね」

 ‐今年の日本シリーズですが、戦力差を考えると圧倒的に勝つかなと思っていたら、3勝4敗で2年連続日本一を逃しました。そのあたり監督はどう思っているんでしょう?

 「戦う前はケガ人もなくて、いい状態で入れるなと思ってましたね。すべての練習を消化できた状態で日本シリーズ初戦を迎えたと。しかし、結果的に相手投手、特に4人だよね。4人の先発投手を打つことに非常に苦労した。しかし、第6戦の逆転というのは価値があったし、これで勢いがつくかなと思ったけれども、やっぱり流れをジャイアンツに呼び込むことができなかった。終わってみれば、打てなかったぁ…と。先発ピッチャーという部分において差が出た。打線も相手投手を打つことができず、先発投手も先取点を取られるというゲーム運びが多かったという感じですね」

 (続けて)

 「ただ、全力を出して第7戦までもつれて、東日本のみならず日本国中が日本シリーズに話題が沸騰したと。その中で、ゲームセットの瞬間、悔しい、非常に悔しかった。その一方で、グラウンドで東北のファンの人たちの喜び方、感激、歓喜を間近に見ること、触れることができて、その時は悔しいという一方で、何かこう感動したというか、拍手を送ったという日本シリーズでした」

 ‐僕らが見ているとそういうムードに負けたんじゃないかと。力負けじゃなくて…。目に見えないムードに、ジャイアンツは負けたんじゃないだろうかと思ったんですが。

 「う~ん、戦い方そのものは、野球というのは“個のプレー”の集合体の中でチームは動くわけですけど、ジャイアンツの方がはるかに反省する個の人間が多かったように思いますね。その分の差として3勝4敗という形になったという気がします。あえてこの場で名前は言うつもりはありませんが…。非常に印象に残る日本シリーズの中で反省した選手が自軍の方が多かったように思います」

関連ニュース

編集者のオススメ記事

野球最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(野球)

    話題の写真ランキング

    写真

    デイリーおすすめアイテム

    リアルタイムランキング

    注目トピックス