安楽“絶叫完封”初戦敗退危機でK斬り
「高校野球・愛媛大会1回戦、済美8‐0三島」(16日、西条ひうち)
済美の157キロ右腕・安楽智大投手(3年)が5安打完封でスタートを切った。昨秋の右肘故障以来、297日ぶりの公式戦マウンドで、7奪三振、最速146キロと好投した。
苦しんだ分、喜びも大きい。右肘を故障した昨年9月22日の秋季県大会1回戦以来、297日ぶりの公式戦マウンド。済美・安楽が最後の夏を5安打完封でスタートした。
「一言で、うれしいです。最初は制球に苦しんだけど修正できた。負けなかったから100点に近い」。116球を投げ抜き、怪物右腕は安どの笑みを浮かべた。
まだ完全復活とは言えない。この日の最速は五回にマークした146キロ。それでもチームが勝つために力を振り絞った。
0‐0のまま迎えた八回。2死三塁のピンチを迎えたが、相手の4番・尾崎をこん身の145キロ直球で三振に打ち取った。「みんなが打てないときに抑えるのがエース」。その気迫が伝わったのか、沈黙していた打線が九回に爆発。打者13人で一挙8点を奪った。
「尺骨神経麻痺(まひ)」と診断された右肘の回復には思いのほか時間がかかった。毎晩、痛む肘に湿布を貼り「あしたは投げられるようになっていてくれ」と祈りながら眠りに就いたという。
一進一退の状態が続いていた3月ごろ、上甲正典監督(67)は安楽を主将から外そうと考えていた。「投げられない不安で気持ちが沈んでいた」と精神的な負担を軽減するためだったが、選手たちから「安楽じゃないとチームを引っ張れない」と声が挙がった。主将交代は撤回された。
満足に腕を振れない苦しみに耐え抜き、4月上旬に実戦マウンドに復帰。急ピッチの仕上げで夏に間に合わせた。試合後、右肘の状態を聞かれた安楽は「100%治りました」と言い切った。
愛媛の頂点まであと5試合。もちろん1人で投げ抜く覚悟だ。「監督さんやチームのみんなに恩返ししたい。自分にできるのは、甲子園に行くこと」。夢の全国制覇へ、157キロ右腕の最後の挑戦が始まった。