父の思いも胸に 坂出商・掛上幸太郎
「全国高校野球・1回戦、敦賀気比16-0坂出商」(11日、甲子園)
2人で戦った。舞台が憧れの甲子園に変わり、その気持ちはさらに強くなった。坂出商・掛上幸太郎内野手(3年)は父・哲郎さん(49)と共にグラウンドに立った。
「ここまで来られたのは父のおかげ。恩返しできたと思う」。大敗に涙が頬をつたう中、声を絞り出した。
「父も坂出商でプレーしていた。でもケガがあった」。投手だった哲郎さんは1年時、右肘を故障。球は塁間すら届かなくなった。「もう厳しいと思った」と哲郎さん。自ら野球の道を断念した。
哲郎さんが3年時、チームは甲子園に出場した。聖地でプレーする同級生たちが、その目にまぶしく映った。
掛上は小学6年時に右肘を骨折して以降、ケガはない。練習後、入念にアイシングやストレッチをするのが日課。それは悔しさを知る父の言葉があったから。「ケガをすると試合に出られなくなる」
同じ道を歩むと決めたとき「絶対に甲子園に連れて行く」と約束した。敦賀気比に0‐16。自身も3打数無安打に終わった。それでも最後まで懸命に白球を追いかけた。
聖地の土はしっかりと持ち帰った。「父の思いも胸に戦った。父に渡そうと思います」。全力で駆け抜けた夢舞台。甲子園に足跡を刻み、父の夢もかなえた。