智弁学園“怪物”岡本、終戦にも涙なし
「全国高校野球・1回戦、明徳義塾10‐4智弁学園」(15日、甲子園)
この勝負を見るために、スタンドは満員に膨れあがった。ナンバーワンスラッガー、智弁学園(奈良)の岡本が初回2死無走者で打席に立つと、空気が変わった。
初球、143キロのストライク。怪物は、明徳義塾・岸が真っ向勝負で来ることを、あらためて確認した。ボール、ファウル。そして130キロのカットボールに、空振り三振。甲子園全体がどよめいた。
三回の第2打席は1点差に迫る左前適時打。六回には先頭打者として、右前打。そして4点差となった八回には、空振り三振…。
すべて、カットボールで決着がついた。「バッターボックスの中で、いつもより一歩後ろに下がった。内角にきたらそのまま打つし、外角にきたら思いっきり踏み込んで打つつもりでした」
打席の位置を工夫するカットボール対策。しかし、有り余る才能と、その工夫で岡本が最も重視する「チームの勝ち」に貢献することはできなかった。
七回途中からマウンドにも上がり、八回には攻守入れ替わって岸と対決も、左前適時打を許すなど2失点。
観戦した岡本の兄・道明さん(25)は、8歳下の弟の「大ファンです。(甲子園で)応援するのが夢だった」と笑顔を見せた。
甲子園は、終わった。岡本は涙を見せず「行ければプロで頑張りたいと思っています」。怪物は日本野球界の最高峰へ歩み始める。