松本“剛腕封印”も盛岡大付が夏1勝
「全国高校野球・2回戦、盛岡大付4‐3東海大相模」(16日、甲子園)
盛岡大付(岩手)が優勝候補の一角である東海大相模(神奈川)を逆転で下し、夏の甲子園8度目の出場で初めて初戦を突破した。最速150キロ、高校通算54本塁打の“二刀流”松本裕樹投手(3年)は、右肘の不調を抱えながらも打たせて取る投球で8安打3失点完投。打っても六回安打を放って逆転を呼ぶなど、投打で勝利に貢献した。
“二刀流”が痛みに耐えて“140キロカルテット”に投げ勝った。松本は4‐2で迎えた九回2死から1点を返された。なおも一、三塁と一打逆転のピンチで相手を二ゴロに打ち取るとガッツポーズ。「先輩方が勝てなかった分まで勝てた。すごく大きな1勝」と安どの笑みを浮かべた。
150キロ右腕が、この日はなりをひそめた。球速は130キロ台が大半で最速143キロ止まり。「相手は140キロ以上の球を普通に打ってきた。球速よりも低めに丁寧に投げ、変化球も交えて打たせて取ろうと考えました」と、技巧派に徹して8安打3失点に抑えた。
実は右肘の不調に見舞われていた。岩手大会では5試合に登板し、準々決勝から3試合で完投。関口清治監督(37)は「肘に負担がかかっていた。盛岡で治療し、こっちでもトレーナーを呼んで電気治療してもらった」と明かした。本人は「疲れとか大丈夫だった。ケガとかもない」と説明したが、同監督は「痛みを抱えながらよく投げてくれた」と奮闘をねぎらった。
チームには、復興途上の被災地岩手への強い思いがある。津波で家を流された部員も3人。遠藤真内野手(2年)は二回に追撃のソロを放ち、出番のなかった主将の前川剛大捕手(3年)、万慎吾内野手(3年)はベンチからナインを励ました。
関口監督が「これ以上ない苦しさを経験しながら、たくましく、こちらが勇気をもらっている」と感心する気丈さ。家族が今も仮設住宅での暮らしを続ける前川は「被災地を勇気づけられたと思う」と話した。
1995年に初めて夏の甲子園にやってきてから跳ね返され続けた初戦の壁を破った。目標は全国制覇。夢のためにも、被災地のためにも、まだまだ負けられない。