一丸の鷹が逆転サヨナラ!指揮官のため
「パCSファイナルS第1戦、ソフトバンク3-2日本ハム」(15日、ヤフオク)
パ・リーグのCSファイナルS(6試合制)が開幕し、リーグ覇者のソフトバンクが1点を追う九回1死二、三塁から、吉村裕基外野手(30)の中越え適時二塁打で逆転サヨナラ勝ちを収めた。パでCSファイナルSの初戦を勝ったチームの突破率は、100%。日本一に向かって「最後の航海」を続ける秋山ホークスが最高の形で波に乗った。
何度も額の汗をぬぐった。お立ち台に上がっても興奮が収まらない。劇的なサヨナラ打の手応えは笑顔を浮かべる吉村の両手に残っていた。「最高に気持ち良かった。普段はあまり走らないけど、走りすぎたので頭が痛い」。酸欠気味でも心地よい。一振りにかける男が、歓喜を呼んだ。
1点を追う九回。先頭の李大浩が四球、送りバントを失敗した松田も中前打でつないだ。抑えの増井に代わって1死二、三塁。お膳立ては整った。
速球に対応するため普段の34インチではなくやや短い33・5インチのバットをロッカールームから持ち出した。初球の150キロをファウル。「ボールに対して合わせていくじゃなくて、自分のスイングでいこう」。意識を修正して2球目のフォークを振り抜くと、打球は陽岱鋼の頭上を越えた。
新天地での復活は秋山監督に導かれた。12年秋にDeNAから移籍。すぐに宮崎秋季キャンプに呼ばれ、指揮官から計8日間の徹底指導を受けた。「スーパースターから教えてもらえるのは僕らだけ。幸せなこと」。改善ポイントを何度も指摘されたが、最初は自分の理解が追い付かない。徐々に引き出しが増え、潜在能力が呼び覚まされてきた。
「最後の最後まで何があるか分からん、野球は」。ベンチ前で吉村を迎え入れた指揮官は感慨深げに振り返った。パのCSファイナルSで初戦を取ったチームの“突破率”は100%。吉村は「もう一度、胴上げしたい」と力強く言い切った。ナインの思いは一つだ。