オリックス平野恵が今季限りで現役引退
また1人、名プレーヤーがグラウンドを去る。オリックス・平野恵一内野手(36)が、今季限りで現役引退を決意したことが18日、分かった。既に球団には報告を済ませ、近日中に会見を開く予定。オリックスで9年、阪神で5年。闘志あふれるプレースタイルでファンを魅了してきたガッツマンが、14年間のプロ生活に別れを告げる。
プレースタイル同様に、強い信念で決断した。各球団の名選手が、続々と引退を決意する中でまた1人、球史を彩った男が、今季限りでの引退を決めた。東海大からプロ入りして14年。オリックス、阪神で活躍した平野が、ユニホームを脱ぐ。
阪神から古巣オリックスにFA移籍して3年目。今季は開幕から正二塁手として活躍したが、以前から抱えていた右かかと痛が悪化。5月21日に出場選手登録を抹消された。懸命にリハビリを続けてきたが長年、酷使し続けた体は思うように回復しなかった。
シーズン残り12試合となった現在も、復帰を目指して汗を流している。だが、離脱した時期にチームは失速。球団、そして支え続けてくれたファンに、感謝の思いは尽きない。だからこそ、レギュラー選手としての責任を痛感。身を引くことを決断した。球団には報告済みで、近日中に会見が行われる予定だ。
2001年に自由獲得枠でプロ入り。ただオリックスで9年、阪神で5年の現役生活は決して、順風満帆だったわけではない。
06年5月6日・ロッテ戦。ファウルフライを追って一塁フェンスに激突した。ボールは離さなかったが胸部軟骨損傷、右腰の肉離れ、手首と右股関節の捻挫…。選手生命の危機に立つ重傷を負った。
だが不屈の闘志で復帰を果たし、阪神にトレード移籍した08年にはカムバック賞を受賞。10年にはリーグ2位の打率・350をマークした。ベストナイン2回、ゴールデングラブ賞2回。オールスターには4度出場するなどファンにも愛されてきた。「支えてくれた方々のおかげ」とグラウンドで浴びた大声援に、涙を流したこともあった。駆け抜けた14年。多くの人に支えられながら、球史に確かな足跡を残した。
原動力は反骨心。野球を辞めると決めた東海大3年の冬。母が部屋から取り出してきたのは、多くのファンから届いた手紙の束だった。『生きる力をもらってます』。幼少期から続けてきた努力は、見る人の心に確かに響いていた。プロに入って、夢を与える存在になると手紙に誓った。
オリックス入団後はプロ選手としての姿を探し求めた。代名詞となったヘッドスライディング。ボールをつかむためなら、フェンスさえ恐れなかった。ケガをする-と批判を受けてもセーフになるならと、自然と一塁に飛び込むようになった。命がけのプレーの先に、感動があると信じてグラウンドに立った。
170センチに満たない体のハンディを、並外れた努力と覚悟で補ってきた。小さくてもやれるぞ、負けてないぞ-と。人並み外れたガッツで駆け抜けた14年。闘志あふれるプレースタイルとは対照的に、静かに、だが潔くユニホームを脱ぐ。戦いの軌跡、そして復活の奇跡。多くの感動と、確かな希望を残して。