偶然目撃した清原容疑者の陰での努力
元プロ野球選手の清原和博容疑者が2日深夜、覚せい剤所持容疑で逮捕された。一報を受けた翌日、彼の野球人生を振り返る写真を探していたところ、ある1枚の写真を見つけ手が止まった。
清原が西武からFAで巨人に移籍した1997年、宮崎春季キャンプ6日目の夜だった。選手が夜間に宿舎で素振りをすることを知っていた私は、その部屋が見える宿舎裏の海岸に向かった。だがこの日は部屋は真っ暗で、他のカメラマンの姿もなかった。しばらく粘ったものの誰も現れず、時間も遅くなりあきらめかけた時だった。灯りがついた。同時に大柄な男が入ってきた。「まさか」。一瞬、目を疑ったが紛れもなくそれは清原だった。当時、若手だった松井秀喜さんらが素振りをするのは見かけたが、ベテラン選手が姿を現すことは珍しかった。ましてや、あの清原が。
約30分間。窓に自身の姿を写し、フォームを確認しながら黙々とバットを振り続けた。高校時代からスーパースターと騒がれ、勝手ながらこれまでは才能だけでやってきたと思っていた。キャンプでもグラウンドでは努力する姿はあまり見せなかったが、やはり陰では努力していたのだ。普段見ることのない、意外な姿に夢中でシャッターを押した。そして翌日の紙面を大きく飾った。
逮捕されて以来、警察車両の後部座席で背中を丸めた姿に、その面影はない。復活への道のりは険しいだろう。だが、一心不乱にバット振っていたあの時の気持ちを思い出すことができれば…。一生懸命野球に取り組んでいたあの頃を忘れていなければ…。もっとも輝いていた頃を知るひとりとして、今後を見守りたい。(写真と文 デイリースポーツ・村中拓久)