小豆島惜敗…島民ともう一度戻ってくる
「選抜高校野球・1回戦、釜石2-1小豆島」(21日、甲子園球場)
1回戦3試合が行われ、選手17人で挑んだ初出場の小豆島(香川)は、釜石(岩手)との“21世紀枠対決”に敗れ、初戦で姿を消した。2点ビハインドの九回に1点を返したが、逆転はならず。それでも選手たちは、モットーの「エンジョイ・ベースボール」を貫き、アルプスに詰めかけた約5000人の大応援団を沸かせた。
大きなため息は、すぐに温かい拍手へと変わった。アルプス席の前で頭を下げる小豆島ナインに、えんじ色の大応援団から「ようやったぞ~」と声が飛ぶ。釜石との21世紀枠対決。選手17人での甲子園初陣は、1点差の惜敗で幕を閉じた。
「チャンスで一打が出なかった」と樋本尚也主将(3年)は悔やんだ。粘り強い相手エース・岩間を打ちあぐねた。それでも、必死で声援に応えた九回。1死一塁から6番・阪倉直貴外野手(3年)が遊撃強襲の内野安打を放つと、敵失も絡んで一塁走者の石川生強内野手(3年)が生還。甲子園のスコアボードに執念の「1」をともした。
17人は全員が小豆島出身。エース左腕・長谷川大矩投手(3年)と植松裕貴捕手(3年)は幼稚園からの幼なじみで、小、中、高校と同じチームでプレーしてきた。アルプスで観戦した植松の母・容子さんが「言葉がなくても分かり合える。親がヤキモチを焼くくらい」と表現する仲。女房役のリードで8安打2失点と力投した左腕は「甲子園は気持ちよかった。応援を力に変えて投げられた」と笑った。
チームは選手自身が練習メニューなどを考え、実行する「ボトムアップ」で強くなった。年末年始には地元企業やスーパーなどでアルバイトをして遠征費や用具代を工面した。月に1回、「小高ジュニア」と呼ばれる野球教室を開き、島内の小学生を指導した。離島のハンディに負けず、「エンジョイ・ベースボール」で地域を盛り上げるナインを、島民も熱烈に応援した。
少子化により、来年春には島内のもう一つの高校、土庄と統合され「小豆島中央」に生まれ変わる。その前にもう一度、島民と一緒に夢舞台へ-。植松は「長谷川と配球を見直して、またここに来たい」と力を込めた。島を笑顔にした“三十四の瞳”は、しゃく熱の聖地を見つめている。