長田惜敗も沸かせた 再び文武両道で夏へ
「選抜高校野球・1回戦、海星3-2長田」(24日、甲子園球場)
21世紀枠で選出された長田(兵庫)は大接戦の末、海星(長崎)に敗れた。自責点ゼロのエース・園田涼輔投手(3年)は、試合後にアルプスの前で号泣。それでも県内有数の進学校が強豪校相手に見せた全力プレーに聖地は大きく沸いた。
もうホームベースを踏んでいた。間違いなく右翼の頭上を越えたと思った。だが右翼手の好プレーに阻まれ、大応援団の悲鳴が終わりを告げた夢物語。自責ゼロながら敗れた園田は「勝つことしか頭になかった。期待に応えられなかった…」とアルプス前で膝をつき、号泣した。
コンディションは万全ではなかった。3日前、右肘に違和感を覚えた。テーピングを施し「投げられないほどではない」と気丈にマウンドへ上がった。
大声援に後押しされ、昨秋のチーム打率・371の海星打線を相手に好投。クリーンヒットは1本で直球の最速は140キロを計測した。味方の3失策がいずれも失点に直結したが「前にもっとひどいエラーを見てたので(笑)。すぐ切り替えられた」と園田。最後まで勝利の女神をほほ笑ませようと踏ん張ったが、思いはあと一歩で届かなかった。
「結構、プレッシャーがあった」-。センバツ出場決定以降、登下校中に声をかけられることも少なくなかった。町の盛り上がりも肌で感じていた。それが重圧となり、園田の顔から笑顔が消えた。表情はこわばり、考え込む場面が増えた。
17歳の少年が一身に背負った大きな期待。だが進学校の奮闘は多くの人に希望と感動を残した。
試合後、すがすがしい笑みを浮かべた園田は「やっぱり野球は楽しい」とつぶやき、「明日から塾にも行かないと。宿題もあるので憂うつです。夏は絶対、戻ってきたい」。母親の赴任先・香港で初めてボールを握った秀才右腕の野球道は、まだまだ終わらない。