中京学院大吉川初陣V!ドラ1候補勲章

 「全日本大学野球選手権・決勝、中京学院大5-2中央学院大」(12日、神宮球場)

 決勝戦が行われ、中京学院大が93年・青学大以来、23年ぶりとなる初出場初優勝を果たした。今秋ドラフト1位候補で阪神も注目する吉川尚輝内野手(4年・中京)は全試合フルイニング出場を果たし、全試合で安打をマーク。疲労困憊(こんぱい)でもチームを引っ張り続け、大きな勲章を手にした。

 限界に達した両足を懸命に動かし、仲間の元へ向かった。マウンド上にできた歓喜の輪。そこで満面の笑みを浮かべた吉川は「本当にビックリしています。まだ優勝した実感がわかないです」と偽らざる心境を明かした。

 大会前、荷物は2泊3日分しか用意しなかった。1着しかないユニホームは毎試合後に洗濯して使った。決勝前に穴が空いたズボンは、4点目のホームに滑り込んだ際、ついに破れてしまった。

 「めっちゃ恥ずかしいです…」と赤土の汚れが染みこんだ戦闘服を触りながら、苦笑いを浮かべた。誰もが予想できなかった快進撃の終着駅は、大学王者だった。

 三回の第2打席で中前打を放ち、全5試合で安打をマーク。クリーンアップとして、圧倒的な打力を誇った打線を引っ張った。学校には室内練習場、専用グラウンドもなく、雪が積もる冬場は中京高の練習場を借りた。キャンプも行わない地方の大学がつかんだ栄冠。吉川は「刺激し合える仲間のおかげです」と言い切る。

 「打てるヤツが正しい」の原則を基に、打撃練習ではコーチではなく結果を残す選手が“指導者”になる。吉川自身も惜しみなく打撃理論を伝えた。短い練習でも「工夫してやればできる」を体現した神宮の奇跡-。手にした勲章と自信は、これからスターの階段を上る男の原動力になる。

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