まるで漫画!1番投手大谷、初球V弾
「ソフトバンク0-2日本ハム」(3日、ヤフオクドーム)
日本ハム・大谷翔平投手(21)が「1番・投手」で出場し、初回に初球先頭打者本塁打を放った。投手の先頭打者アーチは、BIS(プロ野球記録)の詳細な記録が残る1960年以降では初。投げては8回無失点で8勝目を挙げた。チームは首位・ソフトバンクに3連勝で、2007年以来9年ぶりの10連勝となった。
野球漫画でもなかなかない、出来過ぎたシナリオだ。自身初の「1番・投手」でスタメン出場した大谷が開始直後、一振りで新たな歴史を刻んだ。中田が投じた初球、真ん中付近への124キロスライダーを強振すると、打球は鮮やかな放物線を描いて右中間席に着弾。二刀流は大歓声が沸き上がる中、表情一つ変えず、ゆっくりとダイヤモンドを回った。
自己最多に並ぶ10号ソロ。投手の先頭打者アーチは、BISの詳細な記録が残る1960年以降では初の快挙だ。「打った瞬間、『行くな』と思いました。なるべく疲れないようにゆっくり回りました」。大事な初回の投球を考え、普段よりも速度を緩めてダイヤモンドを一周する余裕もあった。
そもそも「1番・投手」での出場は、過去に1971年のヤクルト・外山義明の例があるぐらいで異例中の異例だ。首位を走るソフトバンク撃破に懸けていた栗山監督は思案の末、「一番(状態の)いいバッターが、一番多く打席に立てばいい」と決断。前日の練習中に1番起用を告げた。「すごいびっくりしました」と大谷。ただそれでひるむような男じゃない。最高の結果で応えて見せた。
本塁打を放った後、結果的にベンチ前でキャッチボールをする時間が取れた。初回2死一、二塁のピンチを無失点で乗り切ると、最速161キロ直球に110キロ台のカーブなど変化球を織り交ぜて、8回を5安打10奪三振無失点の力投だ。これで30イニング連続無失点。リアル二刀流で6連勝だ。「(1番は)最初から絶対に先頭で回ってくるので、やりにくさはなかった」。残した言葉がまた頼もしい。
07年以来9年ぶりの10連勝。栗山監督は「度肝を抜く、そういう空気になった意味のあるホームラン。プロ野球のロマンを感じた。翔平が頑張った」と珍しく褒めちぎった。首位と6・5ゲーム差に迫り、2位浮上。「ここで3つ勝ったのは、うちからしたら大きい」。投打に勢いを増す大谷の目には、鷹の背中がしっかりと見えている。