日本ハム・栗山監督が大谷を「1番・投手」で起用した理由
どんな策が飛び出すか。日本ハム・栗山英樹監督(55)の起用法は読めない。特に大谷翔平投手(22)の登板日は、スターティングメンバーが発表されるまで地に足が着いていないような気がする。
誰もが驚いたのは7月3日のソフトバンク戦、「1番・投手」での出場だろう。かつて、某球団でスタッフがメンバーを書き間違え、先発予定ではなかった投手が先発したことがあったが、メンバー表に目を通した時、この手の間違えではないかと思ったりもした。
もちろん、栗山監督はガチで1番で起用。この采配が見事に的中。初回の初球に大谷が放った本塁打で勝った。投手の初回先頭打者弾は日本野球界史上初だった。
投手が1番打者として出場するのは、71年のヤクルト・外山義明以来。栗山監督は、実はこの事例を知っていたという。「俺は野球おたくだからね。歴史の中であった出来事の、いろんなアンテナを張っておくと、(采配の)ヒントが出てくるんだよ。結構、面白い事例があるんだよ」。記録担当もびっくりの野球知識。日本球界で大谷以前に2度あったことも知っていたというのだから、恐れ入る。
昨年オフ、栗山監督が北海道の住居にしている栗の樹ファームに行った。驚いたのは往年の日本選手、メジャー選手のグッズやユニホーム、バットが飾られていたことと、野球に関する書物がびっしりと並んでいたこと。大の野球愛好者を自認するのもうなずける。
「1番・投手」について、栗山監督は「だいぶ前から考えていたんだ」と言っていた。「もちろん過去の事例で1番で使ったことがあるのは分かってたから。『何で監督はこんなことをやったのか』というのを考えたりはするよね。いろいろ出てくるんだよ。面白い事例があって、勉強になるよね。やってみて、正しいか正しくないか分からないけど、後悔はしたくないからね」
それではソフトバンク戦で実行に移したのはなぜか。まず打撃好調の大谷を、できるだけ多く打席に立たせたいという狙いがあった。しかし、ただでさえ体に負担のかかる二刀流。やみくもに1番に入れられるわけではない。
「どこに入れたら負担がかからないか。その前後の打者との兼ね合いを考えて、どの打順が点を取れるか。体の状態も当然、考えている」
チームが勝つためのベストの布陣を考え、大谷の体の状態を見極め、その上で1番での起用に踏み切った。コーチやトレーナーと入念な打ち合わせをしているからこそできたことだ。
スターティングメンバーが出て誰もが目を疑った「1番・投手」。栗山監督が練りに練った作戦だった。(デイリースポーツ・水足丈夫)