女子をグラウンドに立たせられない理由とは

ノックの際に補助をする大分・首藤マネジャー(左)=撮影・高部洋祐
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 近年、女子部員の数は増えてきた。女子プロ野球も発足し、硬式野球に取り組む土壌は確実に形成されてきた。今回、大分の女子マネジャーがグラウンドで練習補助を行い、大会関係者に制止された一件。日本高野連は安全面の配慮と説明したが、その裁定に納得できる部分はある。

 それは硬球が一歩間違えば生命を奪う“凶器”となりえるから。高校時代、チームメートが練習試合で右目に打球を受け、視力が著しく低下した。一塁手で左打者が痛烈に引っ張った打球が捕球目前でイレギュラーしたことが原因だった。すぐに救急搬送され、処置を受けたが、チームメートは野球をあきらめざるを得なかった。

 過去には打撃投手が痛烈なピッチャーライナーを受け、帰らぬ人となったケースもある。日本高野連はその都度、ヘッドギアや打撃投手用の防具を導入するよう推奨してきた。打球速度を抑えるために、バットの重量を900グラム以上に改訂した実績もある。

 小さい頃から野球に取り組み、ボールの危険性を認識した男子ですら不慮の事故は起こってしまう。そこに野球経験のない女子が入った場合、高校野球レベルで120キロ前後の送球スピード、150キロ前後の打球スピードに反応し、退避動作を取ることができるか。日頃から男子に混ざって練習に取り組む女子部員なら可能だろうが、野球経験のない女子マネジャーになれば危険性はかなり上がる。

 ましてや甲子園練習は各校、時間が30分と規定されている。選手たちの動きを見ていると、かなりのスピードでメニューを消化し、グラウンドやフェンスなど球場環境の確認をしている。

 目まぐるしい動きに、野球経験のない報道陣にボールが当たることも珍しくない。試合前のシートノックとなれば7分間。そこですべてのチェックを行わなければならない。ボールのスピード、動きのスピードが合わさり、イレギュラーや暴投など不測の事態が起これば経験者でも避けるのは難しい。

 そのため日本高野連は安全性を配慮し、女子部員がグラウンドに立つことを認めてこなかった背景がある。今回、大分の首藤マネジャーは日常的にノック時のボール受け渡しを担っており、素早い動きが目立った。だからこそ指導者側も「グラウンドに立たせてあげたい」となった。

 ただ他校の女子マネジャーがそのレベルに達しているかどうかは不透明。主催者側として、生徒の安全と将来を考えれば妥当な判断と言えるだろう。各コメンテーターが「世の中と最もずれている競技になりつつある」「危険って性別関係ないじゃん」「謎の様式美、禁則が多すぎますね」と発言しているが、それは“硬球の危険性”を念頭に置いた上でのコメントだったのだろうか。

 もちろん規制が緩和されるのはベストだ。ただそのためには、安全面を含めて乗り越えるべきハードルは高い。ヘルメットを着用したとしても、目の保護はどうするべきか。女子マネジャーが女子部員と偽ってグラウンドに立つケースも出てくるかもしれない。

 決して短絡的ではなく、建設的な議論を重ねた上で-。女子が聖地のグラウンドに立てる日が来ることを願っている。(デイリースポーツ・重松健三)

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