日本ハムの“鷹キラー”高梨、亡き恩師に教えられたマウンド度胸
パ・リーグはソフトバンクが前半戦を終え、首位を独走していたが、日本ハムがここにきて猛追してきた。直近の2カード(7月29~31日・札幌ドーム、5~7日・ヤフオクドーム)の直接対決は日本ハムが、初戦を落としながらも2、3戦目を連勝してのもの。タフな戦いを制している。
昨年までのソフトバンク戦は、初戦を取られると勢いに乗った強力打線に打たれ3連敗すること3度あった。だが、今年は違う。この2カードを見ても、いずれも2戦目に先発している高梨裕稔投手が強力打線を封じ、相手に流れを渡さない投球で勝利する。6月に先発転向後、鷹戦は3戦2勝と3年目右腕がキラーぶりを発揮している。
3年目の今季、頭角を現した高梨は13年、山梨学院大からドラフト4位で入団。元巨人で2度20勝、日本ハムでも活躍した高橋一三監督の指導の下で大学時代に才能が開花した投手だ。
独特のフォームから回転のいい直球を投げ込む。練習中、キャッチボール相手になることが多い黒木投手コーチは特長についてこう証言する。「ボールを受けづらくて、球筋が見えづらいピッチャーなんです。ボールの回転も独特ですし、キャッチャーからしてもミットの芯で受けづらいと思うんです」。となると、バッター目線から見ても当然、タイミングが取りづらい。独特のフォームから投じるボールは相手に会心の打球を飛ばせない。
そしてもう一つは堂々としたマウンド度胸、マウンドさばきとも言うべきだろう。ソフトバンク打線相手の投球時に心構えについて「怖い打線というのは分かっているので、強気に上から見下ろして投げるくらいの気持ちで投げています」と言う。
山梨学院大時代も勝負度胸満点の投球で大学のリーグ戦で2度、最多勝に輝いた。当時の高橋監督の教えをこう振り返る。「監督には『変化球で逃げるようなピッチングはするな。勝負どころで真っすぐでいけ』と教わりました。大学の時にその教えは、曲げなかったですね」。堂々と直球を投げ込むスタイルは、かつて巨人のV9時代に主力投手として活躍した左腕の教えによるものだ。
その高橋氏は昨年7月に心不全により他界した。「(オフに)大学の後輩とお墓参りにいける時にいこうとは思ってるんです」。ここ一番で真っすぐを投げ込める強さを持つ3年目右腕は、恩師に吉報を届けるためにシーズン残り試合もキレのある真っすぐを投げ込み、ライバル球団に立ち向かう。(デイリースポーツ・水足丈夫)