盛岡大付・塩谷、涙見せず「野球もう一回やりたい」 3ランも「負けたら意味ない」
「全国高校野球・3回戦、明徳義塾13-5嘉手納」(16日、甲子園球場)
奇跡を信じ、4番はこん身のアーチをかけた。6点差の九回無死一、三塁。「自分たちなら逆転できる」。盛岡大付(岩手)・塩谷洋樹外野手(3年)が左翼席に2戦連発の3ランを放った。ミラクルには及ばなかったが、猛追ムードを呼んだ一打は、聖地に強烈な余韻を残した。
甲子園では計5安打8打点の数字を残したが、一番欲しかったのは勝利だった。「前回はあんなにうれしかったホームランが、今は何とも思わないです…。100点満点に近い点数だけど、負けたら何の意味もない」。そう言ってうつむいた。
転機は今年1月だった。グラウンド外の不注意で右手を骨折。手術を行い、骨にはボルトが埋め込まれた。約2カ月間スイングができず「今までで一番悔しかった」。自らを責めた塩谷は左手だけでティー打撃を敢行。走り込みに加え、ほとんど行ってこなかったスクワットに取り組み下半身を鍛えた。そんな姿勢が実り、高校通算53本塁打に到達。関口清治監督(39)は「ホームランバッターじゃなかったが、やれることに取り組んで人間的に気持ちいい男になった」とうなずいた。
塩谷は涙を見せなかった。「分かったのは、野球をもう1回やりたいということ」。このままでは終われない。甲子園はそんな気持ちにさせてくれた。大学進学も視野に入れ、次なるステージを模索する。