東邦・藤嶋、悔いはない “仲間を宝に”プロで飛躍誓う
「全国高校野球・3回戦、聖光学院5-2東邦」(17日、甲子園球場)
笑顔で語っていた東邦(愛知)・藤嶋健人投手(3年) が突然、声を詰まらせた。大きな瞳から涙がこぼれ落ちていった。「みんなで一つになって強くなってきた。野球はみんなで楽しくやるもんだと甲子園が教えてくれた」。エース、4番、主将を兼務した大黒柱はそう言いながら、胸を張った。
藤嶋のワンマンチーム。周囲からそう言われることを、本人は望まなかった。昨夏の新チーム結成時、森田泰弘監督から「お前が突っ走るんじゃない。お前が周りを生かせ」と言われた。
仲間を大事に-。その思いが集大成として実ったのが今夏だった。愛知大会は左手首痛などで満足な結果を残せなかった中、チームメートが奮起した。「藤嶋がいなくても勝てるチームになりたい」と語ったのは、投手兼外野手として支えてきた松山仁彦外野手(3年)。他の仲間も考えは同じだった。
だからこそ生まれた2回戦・八戸学院光星戦の大逆転サヨナラ劇。九回、藤嶋が打ち損じて倒れてもカバーしてくれた。「本当に自分一人だったらきっと1勝しかできなかったと思う」。最後は右肘痛に悩まされながらも「悔いはないです」と言い切った。
「プロの世界で甲子園に戻ってきて、楽しい投球ができるように頑張りたい」と語った藤嶋は、仲間という大切な宝物を胸に、最高峰の舞台へ羽ばたく。