8度舞った日本ハム・栗山監督「まだ通過点」 胸に残るは野球の奥深さ
「日本シリーズ・第6戦、広島4-10日本ハム」(29日、マツダスタジアム)
日本ハム・栗山監督が自ら名付けた今季の物語「北の国から2016 伝説」。それは10年ぶりの日本一という最高の形で幕を閉じた。涙はない。信じ続けた選手たちのもとへ笑顔で歩み寄り、身を委ねる。広島の地で指揮官の体が8度、宙を舞った。
4年前の忘れ物-。日本シリーズ制覇を達成した。それでも、胸に去来したのは野球の奥深さだ。「正直、実感がない。野球の難しさばかりが心に残ったシリーズ。勉強させてもらい感謝しています」と振り返った。
勝利のために、常に野球のことを考え続けた。その栗山監督が放つ勝負手の根源は、先人たちが残した遺産にある。自身の専用車には中国の思想家・孔子らの格言を収めたCDを積み、時間が許す限り脳裏に刻んだ。「論語系とか言志録とか草根譚とか何度も聞いたよ」。それが奇跡の采配につながっていた。
「歴史っていうのは、俺の前に経験した人の答えを導いてくれるもの。そういうのが一番、大きい」
この試合でも采配はさえた。八回2死満塁で中田の場面では、ネクストへ大谷を送り出す。だが…。「翔平を早めに(ネクストに)出して翔(中田)と勝負してくれればと思った。(使う気は)ゼロだよ」。『代打・大谷』で相手にプレッシャーを掛け、大量点を導き出していたのだ。
投打にフル回転の大谷に「疲れていたので使いたくなかった。そういう意味では理想的な終わり方」という。つかんだ頂点は己が信念を貫いた証。それでも「若いチーム。まだ通過点」と栗山監督。伝説は始まったばかりだ。