21世紀枠の中村 17歳差の兄弟が一緒にベンチへ「不思議な感じ」
第89回選抜高校野球(3月19日開幕、甲子園)の出場校が決まった。21世紀枠に選ばれ、部員16人で40年ぶりのセンバツ出場の夢をかなえた中村(高知)。甲子園では17歳差の兄弟が一緒にベンチに入って戦うことになる。責任教師の山本泰道(ひろみち)部長(34)と、主将の山本泰生(たいせい)外野手(2年)だ。
指導者と選手の「父子出場」はたまにあるが、それが「兄弟」というのはあまり例がないだろう。
弟・泰生主将が生まれたのは、兄が中村高2年のとき。「練習が終わって家に帰って、母からお腹の中の赤ちゃんの白黒写真を見せられたのを覚えています。うれしいというか、びっくりでした」と山本部長は振り返る。
高校卒業後は県外の大学に進学。教員となって地元・中村に帰ってきたが、間もなく結婚して実家を出たため「弟と一緒に住んだのはトータルで4年間ほど」しかない。「年が離れすぎて話題が合いません」とも。
それでも弟は兄の背中を追うように野球を始め、中村のユニホームを志した。兄は08年に母校野球部の監督に就任。一昨年7月に退任して部長に立場が変わったが、その3カ月前に弟が野球部に入部してきた。
泰生主将は私生活では兄を「お兄ちゃん」と呼ぶが、グラウンドでは「山本先生」に変わる。昨年の新チーム発足時には自ら立候補して主将に就任した。県大会の組み合わせ抽選会や、試合前に先攻後攻を決めるジャンケンの際など、部長と主将が“ペア”で行動する機会は多い。泰生主将は「最初はやりにくかったけど、もう慣れました」と少し恥ずかしそうに笑う。
部員16人の中で、泰生主将が昨秋につけた背番号は「16」。大会直前に体調を崩したこともあり、1桁番号はもらえなかった。「しっかり練習して、甲子園にはレギュラーとして出たい」と言葉に力を込める。
控えでも懸命に声を出してチームを引っ張る弟を、山本部長は「人が嫌がることを率先してできる選手」と評する。そして「弟と一緒に甲子園に行けるとは想像もしてなかった。不思議な感じです」。清流・四万十川が流れる町に訪れた40年ぶりの春。17歳差の兄弟の幸せなチャレンジが始まる。