報徳、永田監督胴上げ勇退へあと2 前日“全員ノック”直訴の主将・岡本が絆弾
「選抜高校野球・準々決勝、報徳学園8-3福岡大大濠」(29日、甲子園球場)
準々決勝4試合が行われ、報徳学園が福岡大大濠を8-3で下し、8年ぶりのベスト4進出を決めた。秀岳館は高崎健康福祉大高崎を9-2で破り、2年連続の4強入り。前日に引き分け再試合を戦った2校はともに敗退した。大阪桐蔭は4-2で東海大福岡を下し、2年ぶり3度目の準決勝進出を決めた。
絆をアーチに描いた。7-3の八回2死。8番・岡本蒼外野手(3年)が高めの直球にくるりと体を回転させると打球は右翼スタンドへ。2回戦でスタメンを外れた主将の公式戦第2号にベンチが沸いた。岡本は「入ると思ってなかったら入った」と照れ笑いした。
中盤から相手が追い上げる中での値千金の一打は、今大会限りで勇退する永田裕治監督(53)への思いが込められていた。前日28日には同校グラウンドで、永田監督の最後の練習が行われた。準々決勝からは3連戦。恩師がもうグラウンドへ戻ることはない。
岡本は当初の練習メニューを変更し、締めくくりにベンチ入りメンバーと3年生全員への“全員ノック”を直訴。メンバー外をわけへだてしない恩師の指導理念をくみ取った最後のセレモニーだった。「ノックが終わって『優勝して、監督を胴上げしよう』と言うとみんなが『勝ちにいこう!』と応えてくれた。本当にうれしかった」。心が一つになった。
打線は福岡大大濠の継投策に対して、初回から得意の機動力を見せつけた。「甲子園は練習試合30試合から50試合の価値がある。こんなすごいゲームができるとは」と永田監督。神宮覇者の履正社の壁は高い。それでも「報徳の魂の野球をしたい」。師弟の絆が伏兵を頂へと押し上げている。