オリックスはなぜ強くなったのか 福良監督が取り組む「伝統の再構築」

 1996年の日本一を最後に12球団で最も優勝から遠ざかっているオリックス。昨年は公式戦、交流戦、2軍戦にオープン戦まで最下位という不名誉な逆グランドスラムまで達成してしまった。そんなチームが現在2位と快進撃を続けている。おまけに2軍は首位。目立った補強もなくなぜ勝てるようになったのか、そこには福良淳一監督(56)が目指す『伝統の再構築』という指針があった。

 確かに新外国人のロメロが4番に定着したことは大きい。それだけで勝てるようになるだろうか。2軍まで首位争いをしている事実はどう捉えればいいのか。逆グランドスラム。何をやってもうまくいかなかった前年から何が変わったのか。福良監督に聞いた。

 「試合の中で何をすればいいか。ずっと言ってきたことが分かってきたんやないかな。同じアウトでも意味のあるアウトがある。例えば駿太なんか犠飛だったら去年までなら“ヒットを打てなかった”となっていた。ヒットを打たなくても走者を進めるとか、点が入るとか。そういうことを積み重ねていくと勝てるようになる。野球が面白くなってきてると思う」

 その場面で何をするべきなのか。どうすれば勝てるのか。首脳陣が口酸っぱく教えてきたことが浸透しつつあるという。

 駿太は「去年までとは違います。例えば1死一、三塁で打席に入ったら、去年ならヒットを打ってやろうと思ってた。追い込まれたら犠牲フライ狙い。今は打席に入る前から“内野ゴロで1点取りにいこう”と思ってる。バントだったり進塁打だったり、みんなが役割を果たしてチャンスが僕のところに来てる。簡単に三振なんてできないし、自分も役割を果たさないと1軍にいられない」と危機感を口にした。

 確かに試合後の選手たちのコメントにも「“つなごう”が合言葉になっている」(小谷野)とか、「一人の投手を全員で崩しにいってる」(T-岡田)といった言葉が聞かれるようになった。勝つために何ができるかを全員が考えられるようになったことが、快進撃の要因というわけだ。

 そのとき福良監督がつぶやいた。

 「本当は選手同士で教えるもの。同じグラウンドに立つ者から言われた方が聞くし。チームとはそういうもの。そういうのがこの20年なくなっていた。上の人間がいなかったからね」

 95、96年とパ・リーグを連覇し、日本一にも輝いた。隆盛を誇ったが、転落も早かった。その要因に急ぎすぎた世代交代があると指摘する。当時の主力だった福良監督は97年に引退。ほかにも長谷川滋利、星野伸之(現投手コーチ)、イチロー、田口壮(現2軍監督)らが次々にチームを離れていった。勝ち方を知る選手たちがいなくなり、阪急時代から培ってきた『勝つ野球』がいつの間にか消え去っていた。

 2000年以降、Aクラスは08年と14年の2位が2回あるだけ。選手の好調が重なれば、上位に食い込んだが、翌年は下位へ沈む。安定した戦いができなかったことが長い低迷へとつながった。

 一昨年の監督就任以来、福良監督が取り組むのは『伝統の再構築』だ。再び勝つ野球を浸透させ、伝統を受け継ぐ選手たちを育成すること。徐々に表れる成果を見ながらも「続けないと意味がない」と根気強く勝つための方法を選手たちに教えていく。

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