山下智茂氏×報徳学園“新旧監督”対談【4】ラッキー安打は“人間性ヒット”

 星稜総監督の山下智茂氏(72)が全国の指導者を巡り次世代の高校野球を考える企画。今年のセンバツを最後に勇退した報徳学園の永田裕治前監督(53)と、教え子で部長から新監督に就任した大角健二監督(36)を山下氏が訪ねた。伝統を引き継ぐ者と受け継ぐ者。2人の指導者の思いを5回にわたってお届けする。

  ◇  ◇

 -松坂世代として華やかな時代だった。

 大角健二監督(以下、大角)「主将だった立命大4年の春季リーグ戦初戦で近大に勝ったんです。当時の近大は林(威助=元阪神)、藤田(楽天)、大西(元オリックスなど)らがいて強かった。表向きには喜んでいたけど、内心は何で自分が出てないのに勝ってるんだと思っていた。すると学生コーチから怒られたんです。4番やエースの代わりはおるけど、主将の代わりはおらへんやろって。それまでは投げられないストレスで練習中に暴れたりボールをぶっちゃけたり…。それからは、試合に出られなくても主将として務めるようになりました」

 山下智茂氏(以下、山下)「挫折がいい経験になったね」

 -永田監督は顧問としてサポートするが、好きにやればいいと。

 永田裕治前監督「やってみないとわからないと思う。今は希望に燃えているけど迷いも出てくるでしょう。部長として3度甲子園のベンチに入ったけど、監督にならないとわからないことがある。今後はそれがわかってくると思います」

 山下「コーチ、部長を経験しているのが大きい。采配も見ている。ケガしてるからこそ人の苦しみとか選手の操縦法とかがわかるんじゃないかな。永田さんはガーンと声で来る。声で選手を引っ張る。そこに他の監督にない鋭さがあるよね。声と体から出る闘志というか、人を引きつける魅力がある。そこにハートがある。ハートがないと子供はついてこないから」

 -大角監督は大学4年で星稜にコーチ修行に行った。

 大角「監督になって最初にミーティングでその時の話をさせてもらいました。あいさつって機械的にやらされているのもあれば、心からしてくれているものもある。機械的でもしっかりしているとは思うんですが、星稜では人としての温かみを感じた。されて気持ちのいいあいさつを星稜で学びました。あと、今も練習後にベースは毎日洗っています。星稜ではベースが真っ白だったから」

 -日常生活がグラウンドでも出る。

 大角「プレーに面白いように結びつきますね。あいさつがきちんとできる子とそうでない子は如実に出ます。(ラッキーな安打を)“人間性ヒット”って、生徒たち自身もよく言いますね」【5】に続く

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