大冠、王者追い詰めた 27年ぶり公立Vならずも驚異の粘り

 「高校野球大阪大会・決勝、大阪桐蔭10-8大冠」(30日、大阪シティ信用金庫スタジアム)

 大阪大会では大阪桐蔭が3年ぶり9度目の甲子園出場を決め、大冠(おおかんむり)は1990年以来となる大阪公立校の夏の甲子園出場を逃した。

 最大のジャイアントキリングはならなかった。あと一歩届かなかった1990年の渋谷以来となる大阪公立校の夏の甲子園出場。東海大仰星、大阪偕星学園、上宮と私学の強豪を撃破してきた大冠の快進撃は、大阪桐蔭に阻まれた。

 史上初の2度目の甲子園春夏連覇を狙う強敵を最後まで苦しめた。八回に5点を奪われ、4-10となっても「負けたという気持ちの選手は一人もいなかった」と主将の猪原隆雅捕手(3年)。その言葉通り、九回には飯隈亮太内野手(3年)、冨山翔也内野手(3年)の適時打で2点を返し、なお2死一、二塁で猪原の左翼線への2点二塁打で2点差まで追い詰めた。

 結局追いつくことはできなかったが、試合後の大冠ナインには涙はなかった。春の王者と対等に打ち合い、猪原は「ストレートがゾーンに来たらどんどん振っていこうと言っていた。桐蔭のエースを打てたのはうれしい」と頬を緩めた。

 公立とは思えない練習量が快進撃を支えた。試合のない冬場は1・5キロの木製バットと1・8キロの鉄柱バットを使い、1日3000スイング。手のひらが血だらけになるほど振りまくった。東山宏司監督(55)は「(現3年が入学した時)気持ちのある子ばかりで厳しい練習を課しても大丈夫だと思った。年々力を付け、この夏を迎えたのだが…」と涙をにじませた。

 奇跡は起きなかった。それでも猪原は「公立でもここまでやれるというのを、この大会で示すことができた」と胸を張った。私学に負けない“公立魂”は来年、後輩に受け継がれる。

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