彦根東、開幕戦劇的サヨナラ 創部124年目の聖地初勝利

 「全国高校野球選手権・1回戦、彦根東6-5波佐見」(8日、甲子園球場)

 台風5号の影響で1日遅れで開幕し、開会式と1回戦3試合が行われた。滋賀県内屈指の進学校・彦根東は、開幕試合で波佐見にサヨナラ勝ちし、1回戦を突破した。1点を追う九回、同点としてなお2死一、二塁の好機に4番・岩本道徳内野手(3年)が試合を決める殊勲打を放った。1894年の創部から124年目、春夏通じて5度目の出場で悲願の甲子園初勝利を挙げた。

 赤く染まった一塁アルプス席が大きく波打ち、グラウンドで抱き合うナインを祝福した。甲子園初出場となった1950年のセンバツから春夏通算5試合目。彦根東が劇的な展開で、念願の聖地初勝利をもぎとった。

 1点を追う九回。3度目のビハインドをはね返して同点とし、なおも2死一、二塁。4打席連続凡退の岩本が、5打席目に立った。

 「『思い切り振れ!』という仲間の声を信じて振り切った」。外角直球を捉えて右前へ。熱戦に終止符を打つと右拳を突き上げた。

 苦しんだ分、喜びも大きかった。1年だった15年3月頃。四肢に力が入らなくなる難病、ギラン・バレー症候群を患い、1カ月半も自宅で寝たきりの生活を送った。「マネジャーでもいいかな、と思ったこともあった」。完全復帰は同年6月。それでも折れかけた気持ちを奮い立たせ、勉強しながら1日800回の素振りを敢行。人一倍の努力を重ねてきた男が、彦根東に歓喜をもたらした。

 村中隆之監督(49)は「野球部の歴史を動かせた」と大興奮。岩本も「僕たちの勝利と、甲子園初勝利が重なってうれしい」と声をはずませた。

 文武両道を体現する彦根東を、観衆は大歓声で祝福した。多くの部員は平日、練習後の午後8時以降に塾へ通う。さらに翌朝も授業開始前の午前7時から、それぞれの教室で1時間の“朝勉”に励む。その姿は同校で生徒の模範となっている。

 今大会も宿舎内に勉強部屋が用意され、部員は問題集などを持ち込んでいる。岩本はiPadで塾の授業を受講。広島大進学を志望しており、将来は高校野球の指導者を目指している。

 ただ、今は勉強が少しおろそかになっているという。岩本は「今日もできないかな…」と苦笑い。理路整然とした受け答えを見せる秀才たちは、屈託のない笑顔を見せ、劇的勝利の余韻に浸った。

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