東筑・升田 天国の父に届けた聖地での公式戦初マウンド
「全国高校野球選手権・1回戦、済美10-4東筑」(8日、甲子園球場)
一球、一球に力を込めた。「お父さんが見ていてくれるから安心して投げよう」。心の中で誓う。天国の父・耕一さんに東筑・升田由太郎投手(3年)は頼もしい姿を届けた。
公式戦初マウンドは6点ビハインドとなった八回2死二、三塁。「思ったよりも緊張しなかった。今までに味わったことがない感覚」。相手を3球で右飛に仕留め、無失点に抑えた。
父が野球を教えてくれた。3歳でキャッチボールを始め、小学生になると近所の子どもたち6、7人を集めて、近くの公園で一緒に野球の指導を受けた。5年生になる時には父を監督とした少年野球チーム「青空ドリームズ」の創部計画が持ち上がった。チーム結成前の2010年7月5日、父は胆管がんで他界。59歳の若さだった。夢のチームが始動することはなかった。
野球が大好きだった父。一緒に過ごした小学4年の夏休み、甲子園大会で活躍した選手を報じた新聞記事などを切り抜いてまとめたものを自由研究の作品として提出した。一緒にテレビを見ながら父と「甲子園はいいな」と話したことは今でも鮮明に覚えている。
夢はまだ終わらない。「甲子園のマウンドに立つことができたのはよかったですけど、悔しさや、やり残した感じがある。大学に行っても続けようと思います」。福岡へ帰り、聖地での思い出と見つかった新たな目標を父に報告する。