広陵・中村2発!「今大会ナンバー1野手」スカウト陣評価急上昇
「全国高校野球選手権・1回戦、広陵10-6中京大中京」(11日、甲子園球場)
広陵(広島)が今秋ドラフト上位候補・中村奨成捕手(3年)の2本塁打などで中京大中京(愛知)に10-6と逆転勝ちを収め、夏の大会30勝目を挙げた。中京大中京の初戦敗退は1959年以来、58年ぶり。
右手を天に向かって大きく突き上げた。2点ビハインドの六回1死。中村が勝利への思いを一振りに込めた。公式戦3試合連続となる大会11号ソロ。注がれる4万7000人の視線と大歓声を独り占めし、ダイヤモンドを一周した。
「いままで打った中で一番、気持ち良かった。何としても流れが欲しかったので本当によかったです」
投手の交代直後を攻めた。外角高め142キロ直球を強振した打球は一直線で右中間席へ到達。この一発で試合の流れが一変し、3番からの4連打で一気に逆転に成功した。八回2死一塁では右翼ポール際に2ランをたたき込み、公式戦自身初の1試合2発で高校通算40本塁打。ともに右方向へ運び、力強さを見せ付けた。
守備でも魅せた。六回無死一塁のバント処理では自慢の強肩で二塁封殺。九回は左脚がつりながらも懸命に投手をもり立てた。
バックネット裏の評価も急上昇だ。ブレーブス・大屋スカウトは「今大会No.1の野手。すぐアメリカに来てマイナーから鍛えたら面白いと思う」と高評価。「体の力もあるし、地肩が強い。スケールもある」(阪神・田中スカウト)、「プロで十何年レギュラーとして出られるものを持っている」(中日・中田スカウト部長)と称賛が相次いだ。
女手一つで育ててくれた母・啓子さん(44)にも恩返しができた。出発前に「最後だから楽しもうね。お母さんも楽しむよ」と手紙を渡された。返事は返せなかったが、最高の形で思いを伝えた。一塁側アルプスで観戦していた母は「大舞台でホームラン、最高の気分です。しかも2本。びっくり」と声を弾ませた。
広島大会では右手に受けた死球の影響もあり、打率・176。だが準決勝と決勝で本塁打を放ち、甲子園出場の立役者となった。名門対決を制し、9年ぶりの初戦突破。節目の夏30勝を挙げた。「日本一が目標ですが、目の前の一戦に全力を尽くしたい」と中村。初の夏の頂点へ。チームの要が輝きを放ち続ける。