“脱走”キャプテン聖地で逃げず 下関国際・植野9失点も113球完投

 「全国高校野球選手権・2回戦、三本松9-4下関国際」(13日、甲子園球場)

 かつて“脱走”した主将が聖地で逃げずに投げ抜いた。下関国際(山口)の植野翔仁投手(3年)は9点を失いながらも113球で完投。打席では五回にチーム初の適時打を放った。「何が何でも自分がかえすしかないと思った」。2年生中心のチームで最後まで存在感を示した。

 「正直、チームで一番頼りないキャプテンでした」。誰もが口をそろえて今春までの植野を評した。背中で引っ張るはずのランニングでは後方を走り、ミーティングでは自分から話せない。揚げ句の果てに…練習から逃げ出した。

 坂原秀尚監督の厳しい指導の下、冬は800メートルを10本走るメニューが課された。全員が設定タイムをクリアしないと1本がカウントされない過酷なルールで、計40本を数える日もあった。極限状態のチームをまとめきれなくなった植野は2月のある日、「心身ともに限界で辞めようと思った」と突然グラウンドから姿を消した。

 それでも指揮官は「主将失格」の烙印(らくいん)は押さず、根気強く説得した。植野もその期待に応えようと変貌を遂げ、同校を創部52年で初の甲子園に導くほどに成長。「一番頼れる主将」と呼ばれるまでになった。

 「監督を勝たせることだけを考えてきたので悔しい」と肩を落としたが、監督にはその堂々たる姿だけで十分だった。「主将、エースとして一番苦しんだが、最後の最後に開花してくれた」。指揮官の目に涙が光った。

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