花咲徳栄が埼玉勢夏初V 「甲子園で勝つために来て欲しい」西川が大勝立役者

 「高校野球選手権大会・決勝、花咲徳栄14-4広陵」(23日、甲子園球場)

 花咲徳栄が2桁得点の猛攻で広陵を破り、埼玉勢として夏の甲子園初優勝を果たした。今秋ドラフト候補の西川愛也外野手(3年)が3安打4打点の活躍。全6試合で2桁安打を記録した打線をけん引した。春夏9度目の甲子園だった岩井隆監督(47)は、悲願の日本一に男泣きした。

 力強く右手を突き上げて、西川は歓喜の輪へと走り出した。猛打で全国の強豪をなぎ倒して立った頂点。「鳥肌が立った。生きてきて一番うれしい1日」。仲間と喜びを分かち合うと、心からの笑みが浮かんだ。

 初回無死二、三塁からは、詰まりながら変化球を中前に落とす先制2点適時打。五回は無死一、三塁から直球を捉える右中間への適時三塁打で、追加点をたたき出した。六回は技ありの左翼線二塁打。真骨頂の巧みなバットコントロールで、きれいに打ち分けた。

 岩井監督に「甲子園で勝つために来て欲しい」と誘われ、大阪から進学を決めた。親元を離れた初めての寮生活。「打てなかったらどうしよう」。チームメートに吐けない弱音は、母・裕子さん(46)にLINEで告白した。昨春は右大胸筋を断裂し、昨年11月に手術。試練の時も励ましの返信で心を奮い立たせて成長してきた。

 昨年春夏甲子園出場のメンバーだった西川と千丸を中心に、今年は全国制覇を目指していた。ところが6月下旬、岩井監督にボールの管理不足を代表して叱責された主将の千丸が、練習試合でも初回で交代させられた。「千丸まかせになっている。これじゃ日本一になれない」-。危機感を覚えたナインは車座になって1時間半、意見をぶつけ合い、千丸と同室の西川は寮でも相談に乗った。指揮官が「あれで全員がチームのことを考えるようになった」という分岐点が、今夏の“つなぐ猛打”に現れた。

 全6戦2桁安打で61得点。決勝の大舞台で、大勝の立役者となった西川は「岩井先生が最後まで自分を信じてくれたおかげ」と恩師に感謝し、約束を果たしたことを喜んだ。進路については「よく相談します」と話すにとどめたが、プロ志望が確実。愛也という名の通り、最後に『聖地に愛された』主砲が、埼玉勢に初の優勝をもたらした。

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