花咲徳栄・岩井監督、貫いた破壊力 恩師の遺言胸に悲願の頂点獲り
「高校野球選手権大会・決勝、花咲徳栄14-4広陵」(23日、甲子園球場)
花咲徳栄(埼玉)が2桁得点の猛攻で広陵(広島)を破り、埼玉勢として夏の甲子園初優勝を果たした。
冷静沈着な指揮官の目に涙が浮かんだ。埼玉勢初の夏の甲子園制覇。春夏9度目の甲子園だった花咲徳栄・岩井隆監督(47)は「富士山を登るように、選手たちがつらい道を一歩一歩駆け上がってくれた」と喜びをかみしめた。
「破壊力」をテーマに鍛え上げたチームが、16安打14得点の猛攻で頂点に立った。
一昨年は小笠原(現中日)らを擁する東海大相模に準々決勝で惜敗。昨夏は3回戦で作新学院と対戦し、今井(現西武)の快速球に屈した。超高校級の投手を攻略するには「つなぐだけではダメ。一発で試合をひっくり返すような破壊力が必要」と痛感。冬場に10キロのハンマーを振り下ろすトレーニングを導入し、ナインのパワー強化に力を注いだ。その成果が、今大会6試合すべて9得点以上という猛打に表れた。
「おやじがどこかで見てくれていたと思う」と静かに語る。「おやじ」とは、00年に急逝した故・稲垣人司前監督(享年68)。桐光学園時代の恩師で、花咲徳栄では9年間コーチとして仕えた。亡くなる間際、恩師は「逃げたらいけんじゃけなあ」と故郷の広島弁で言い残したという。
その“遺言”を胸に戦った決勝戦。広陵の3番・中村に対しても、投手陣に真っ向勝負を指示した。「最後まで逃げない野球は貫けたと思います」。47歳の指揮官は誇らしげに笑った。