日本シリーズは相手の先発を六回までに打ち崩すかがカギ
28日開幕の日本シリーズは、ホークスとベイスターズという初顔合わせの対戦となりました。両チームの共通点はフロントがオペレーションシステムを駆使して、データ解析を行いながらチーム運営をしており、IT系企業を冠に持つチームの面目躍如といったところでしょうか。
さて、この両チームによる今季の交流戦はホークスの2勝、ベイスターズの1勝でした。この3連戦でのデータで特筆すべきは、ベイスターズの砂田を除き、救援陣の失点が0だったということ。つまり、先発投手を打ち崩した方が勝利していることの証左であり、このシリーズでも、いかに相手の先発投手を六回までに打ち崩すことができるかどうかがカギとなるでしょう。
ちなみに、今季のソフトバンクは六回終了時にリードしている場合76勝3敗で勝率・962になります。これは救援投手陣の力量もさることながら、相手先発投手を早い回に打ち崩し、先制点を取れる強力な打線があることにも起因します。
そんなホークスの打線はCSでも本領を発揮し、チームOPSは0・790と好調。特にシーズン終盤にケガで戦線離脱したキャプテンの内川聖一が4試合連続本塁打を放ち、柳田悠岐が不在の懸念を吹き飛ばす活躍ぶり。その柳田も最終戦に復帰し、4打数2安打と結果を残しました。さらには中村晃、松田宣浩もOPS0・9超えの活躍を見せました。
それに対するベイスターズですが、CSのチームOPSが0・780。梶谷隆幸、筒香嘉智の両選手がともにOPS0・9超え、さらには新進気鋭の柴田竜拓も打率・400、OPS0・9超えの活躍です。また、桑原や首位打者の宮崎も好調を維持しています。
ただ、下位打線との打力の乖離(かいり)が気になるところです。ベイスターズはカープとのCSで、その乖離を埋めるべく、少ないチャンスをものにする効率の良い攻撃で得点し、小刻みな継投によって相手打線を封じ込めるという、短期決戦に長けた戦術を披露して勝ち上がってきました。
巨大戦力と呼ばれるホークスに対して、調子の良い打者を固めて配置する打線を組んで先制点を奪い、継投で抑えるという先のCSで見せた戦術が機能するかどうかが、このシリーズを制するポイントとなりそうです。
また、今シリーズの舞台となるヤフオクドームと横浜スタジアムはともにホームランが出やすい球場です。それはパークファクターの値からも証明されています。つまり、一発が雌雄を決する引き金になりやすいシリーズであるとも言えるでしょう。
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※ OPS 出塁率と長打率を足し合わせた指標。0・8を超えると主軸級、0・9を超えるとオールスター級、1を超えると球界を代表する一流打者と評価される。
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鳥越 規央(とりごえ・のりお)統計学者。大分県中津市出身、1969年生まれ。野球統計学(セイバーメトリクス)を駆使した著書は『本当は強い阪神タイガース』(筑摩書房)『スポーツを10倍楽しむ統計学』(化学同人)など多数。所属学会はアメリカ野球学会、日本統計学会など。JAPAN MENSA会員。江戸川大学客員教授。