楽天・片山、反対押し切りトライアウト受験 BCリーグ兼任コーチとして再出発
【第2の人生へプレーボール】
今オフも多くの選手が所属チームを退団した。新天地に働き場所を求める者、引退して指導者として歩み出す者がいれば、ユニホームを脱いで新たな世界に挑戦する者もいる。彼らの第2の人生にエールを込めて、スポットを当てる。楽天・片山博視投手(30歳) を追う。
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12年間を過ごした仙台に別れを告げ、片山は新天地となる埼玉県へ引っ越し準備を進めていた。新たな働き場所は、BCリーグ・武蔵ヒートベアーズ。肩書はコーチ兼任投手。あくまでプロという立場で、野球を続ける選択をした。
05年度高校生ドラフト1位で、報徳学園から楽天に入団。191センチの長身左腕は才能を開花させ、2010年から2年連続50試合登板するなど中継ぎの一角として活躍した。だが、度重なる左肘の故障に悩まされ、2015年に打者に転向。同年オフには育成契約となり、翌年に投手に復帰したが、今年3月に左肘側副じん帯再建術(トミー・ジョン手術)を受けた。
「手術した時点で、今年でクビだろうという覚悟はしていた。腹はくくってました」
10月1日に戦力外通告を受けると、12球団合同トライアウト受験を即決。「どこか拾ってくれるところがあるかもしれない。まだやりたいっていう気持ちが強かった」。手術から全治10カ月の診断だったこともあり、周囲の反対を押しきっての決断だった。
当日はブルペンで左肘に激痛が走った。「正直、痛かったです。でも、マウンドに上がったら痛みなんてなくなっていた」。最速は134キロだったが、全力で腕を振った。
社会人チームからの誘いも来た。だが「働きながら野球をやるのか、独立(リーグ)でやるのか。NPB復帰を少しでも目指すのであれば、そこにかけてみようという気持ちがあった」。昨年に離婚したこともあり、再起へ挑戦することにためらいはなかった。当面の目標は実戦復帰。コーチ兼任という立場での再出発に片山は「しっかり投げている姿を見せないと、と思います」と復活を目指す姿勢で、指導者として尽力するつもりだ。
「いずれはNPBに…それはもちろんあります。でも、そんなことだけを考えていたら、お金を払って見に来てくれたお客さんに失礼でしょう。僕のやることは、チームを優勝させることです」。12年間で培ったプロとしての心意気を示した。